冬のテストで衝撃的なデビューを飾ったブラウンGP。BGP001は初テストでノーセットアップの状態からトップタイムを塗り替え、その実力は、フェラーリのフェリペ・マッサも「敵わない」と述べており、はやくもブラウンGPは2009年F1開幕戦の優勝候補にも挙げられている。そのあまりの速さから「最低重量を満たしていない」「燃料をかなり軽くしている」との憶測も出ているが、1発の速さ、ロングランのペースを分析しても、そのタイムは合理的なものであり、特殊なことをしている様子はない。
では、なぜブラウンGPは速いのか?メルセデス製エンジンにより「70馬力増」1つは、メルセデス・エンジンが挙げられる。フェラーリ・エンジンの搭載も検討したブラウンGPだが、シャシーとのマッチングの良いメルセデス・エンジンを採用した。ブラウンGPのエンジニアによれば、メルセデス・エンジンは、昨年搭載したホンダ・エンジンと比較して「70馬力は上」だという。今年、ルノーにエンジンの改良が許されており、ルノーは30馬力アップさせたとされている。ルーベンス・バリチェロも、メルセデス・エンジンのパワーとドライバビリティの高さを絶賛しており、ブラウンGPの突然の速さがエンジンの違いによってもたらされたのは明らかだろう。ダウンフォース削減の影響次に挙げられるのはダウンフォース削減への対応だ。2009年のレギュレーションでダウンフォースは昨年の50%減となったが、各チームはすでに80%くらいまでダウンフォースを取り戻しているという。ホンダは2007年マシンRA107で空力コンセプトを一新。しかし、そのコンセプトは失敗に終わり、2008年時点でRA108のダウンフォースレベルは、すでに他チームに比べ90%以下だったとも言われている。そのため、継続起用となったバトン&バリチェロは、ダウンフォース削減の影響をほとんど感じておらず、先のメルセデス・エンジンの影響もあり逆に「乗りやすい」とさえ感じているだろう。バルセロナでのバリチェロのコーナーでのスムーズな挙動をみても、昨年マシンより「乗れている」のは間違いない。早くからのマシン開発2009年を勝負の年と見据えたホンダは、2008年シーズンを早々に捨て、早くから2009年のレギュレーションに沿ったRA109の開発を進めてきた。その恩恵はしっかりと表れており、BGP001は全チームで最も遅い発表になったにも関わらず、各チームが冬季テストで早い時期から詰めてきたエアロコンセプトの長所をすでに備えていた。論争となっているリアディフューザーを設計した部分からも、空力レギュレーションに対して相当なシミュレーションが行われてきたことが見てとれる。またブラウンGPは、同じくメルセデス・エンジンを搭載するフォース・インディアとは異なり、独自に設計したギアボックスを採用する。ホンダは相当軽量なギアボックスを開発したとされており、優れたリアのトラクションを発揮している。ギアボックスと連結するリアサスペンション、すなわち全体のサスペンション・ジオメトリーも独自に開発されたものであり、2009年マシンのパフォーマンスに苦しむマクラーレンの影響を受けていない。KERS非搭載によるメリットそして、KERSを搭載していないのもアドバンテージとなっているだろう。KERSの開発には高いコストが掛かるため、ブラウンGPは、KERSの搭載を今のところ念頭に置いていないようだ。そのおかげで30kgといわれるKERSの重量による負荷を受けず、理想的な前後重量配分を保てている。また各チームがKERSの信頼性に時間を費やすなか、KERS非搭載のブラウンGPは大きなトラブルなく走行距離を延ばし、セットアップを煮詰めることに成功している。上記のように、今のところホンダF1撤退の影響が、すべてポジティブな方向に働いているブラウンGP。各チームが遅れを取り戻してくると思われるヨーロッパラウンドまでにどこまで結果を出せるかに注目したい。(F1-Gate.com)