アイルトン・セナは、ホンダF1撤退のニュースに涙を拭った。1992年7月18日、朝日新聞の一面トップの見出しには『本田技研がF1撤退へ』の文字が大きく刷られた。記者にそれとなく話した川本信彦は、ホンダのF1休止が、朝日のトップニュースとして扱われるとは思ってもみなかった。
それだけホンダのF1活動がレース運営だけでなく、広報活動も含めて、10年間で日本に深く根付いてきた証だった。そして、F1イタリアGPが開催されている9月11日、ホンダは東京・青山の本社で記者会見を開き、F1からの撤退を正式に発表した。ホンダF1に強い忠誠心を抱いていたアイルトン・セナは精神的にひどく落ち込んでいた。モンツァのパドックでホンダF1の撤退について質問されたアイルトン・セナは「今年に入って、そういった話を耳にしたことはあった」とコメント。「撤退話が噂であることを願っていたが、そうせざるを得ない現状もわかっていた。ホンダのF1に対する積極性と、築き上げてきた業績を考えれば、僕はホンダの一員として、ドライブできたことを誇りに感じている」「和光、栃木、東京のホンダ関係者の努力と業績に対して心からお礼を言いたい」そう語って、パドックへと小走りに向かったアイルトン・セナは両腕でそっと涙を拭った。


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