アストンマーティンは、2024年のF1コストキャップに関して軽微な手続き上の違反を認め、FIAと「受諾違反協定(Accepted Breach Agreement)」を締結したことが明らかになった。Crash.netによると、問題は2024年3月31日の提出期限までに会計書類の署名が1つ欠けていたことに起因していた。書類自体はすでに完成しており、必要な署名が整い次第、完全に監査済みの文書を再提出したという。アストンマーティンはこの手続き上の不備をFIAに逐次報告しており、状況を透明に共有していた。
関係者によれば、署名の欠落はチームの責任外の事情によるもので、期限後にしか対応できなかったものの、形式的にはFIAの規定違反にあたる。そのためアストンマーティンは手続き違反の責任を受け入れたが、罰金やペナルティは科されない見通しだという。2024年のコストキャップは1億3500万ドル(約204億円)に設定されており、アストンマーティンの支出はこの上限を下回っていた。FIAの発表遅延が「違反疑惑」を加速FIAは現在、2024年のコストキャップ提出書類の審査を完了しておらず、各チームへの「遵守証明書(Compliance Certificate)」もまだ発行していない。この遅れが、いくつかのチームに「違反の可能性があるのではないか」という憶測を呼んでいる。最後に証明書の発行が9月を越えたのは2022年で、その年はレッドブルとアストンマーティンがいずれも違反と認定された。レッドブルは当時の上限1億4500万ドルを超過したため700万ドルの罰金と空力試験制限を受け、アストンマーティンは手続き上の違反で45万ドルの罰金を科された。現在も複数のチームが調査対象になっているとの報道があり、中には「重大な違反」があるとのうわさもある。FIAは声明の中で次のように述べている。「FIAのコストキャップ管理部門は、チームおよびパワーユニットメーカーから提出された2024年分の書類審査を最終段階に入っています。結果は近日中に公表される予定です」「FIAは特定のチームやパワーユニットメーカーの個別の提出内容についてはコメントしません。全ての審査が完了・確定した段階で、結果を公式に発表します」分析:透明性確保と信頼回復のバランス今回のアストンマーティンの件は、FIAのコストキャップ制度における「軽微な手続き違反」がどのように扱われるかを示す一例といえる。支出自体は上限内であり、意図的な隠蔽や不正はなかったことから、ペナルティなしでの終結は妥当な判断といえるだろう。一方で、FIAが依然として全チームの審査を終えていない点は、ファンやメディアの間で「再び違反があるのではないか」という疑念を招いている。特に2022年の“レッドブル超過事件”以来、コストキャップの信頼性は常に注目の的だ。今後、FIAがどのタイミングで遵守証明書を発行し、どのように透明性を確保するかが、制度への信頼回復の鍵を握る。
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