レッドブルを率いて20年にわたる成功を築いたクリスチャン・ホーナーがチーム代表職を解任され、次なる舞台としてアストンマーティン・ホンダへの加入が浮上している。クリスチャン・ホーナーは現在もレッドブルと契約上の関係にあるものの、すでに「オペレーション業務」からは外れており、他チームへの移籍が可能になる日は近いと見られている。
今回の解任劇の背景には、ホーナーの後ろ盾だったタイの実業家チャレーム・ユーヴィディヤの持株比率が51%から49%へと引き下げられ、オーストリア側との権力バランスが均衡したことがあるとされる。ホーナーの去就にはすでに複数のF1チームが関心を示しており、フェラーリ、アルピーヌ、アストンマーティン、さらにはキャデラックの名が挙がっている。中でもホンダとワークス体制を築くアストンマーティンは、経験豊富な指導者を求める立場にあり、有力な選択肢となっている。元レッドブルのF1ドライバー、ロバート・ドーンボスはオランダのNOSに対して「彼がまたパドックに戻ってくるのは間違いない。けどフェラーリは家族への影響が大きすぎると思う。彼は生粋のイギリス人で、たとえフェラーリが望んでもマラネロにはそう簡単に引っ越さないはずだ」と語った。イタリア紙『Corriere della Sera』によれば、フェラーリはフレデリック・バスールの将来について検討しているものの、ホーナーを後任候補には挙げていないという。ドーンボスはさらに「彼にはアストンマーティンが合っていると思うし、アルピーヌのようなチームを立て直すことにも魅力を感じるはず。彼は間違いなく次の挑戦を探している」と述べた。アストンマーティンは今年、2022年よりチーム代表を務めてきたマイク・クラックがチーフトラックサイドオフィサーに移動し、アンディ・コーウェルがCEOとチーム代表を兼任している。2026年にはホンダのワークスパートナーとなり、クリスチャン・ホーナーとともにレッドブルで驚異的な成績を残したエイドリアン・ニューウェイも在籍している。ホンダ・レーシングの渡辺康治社長は、ホーナー解任に対して次のようにコメントしている。「パートナーシップを始めた当初から現在に至るまで、クリスチャンには本当に多くのご協力をいただき、感謝しています」一方、ドイツの『Auto Bild』は、ホーナーの長年の友人であるフラビオ・ブリアトーレが、チーム株式を提示する形で獲得に動いている可能性があると報じた。さらに『Auto Motor und Sport』のミハエル・シュミットは、キャデラックがグレアム・ロードンの後任としてホーナーに強い関心を示していると指摘している。「ロードンを軽んじるわけではないが、彼の実績はマルシャ止まり。一方でホーナーはレッドブルを率いてきた」「F1ファンしか知らないロードンに対して、ホーナーはNetflixのおかげで世界中に知られている。彼がトップに立てば、キャデラックのプロジェクトはまったく異なる評価を得るだろうし、政治的な影響力も格段に増すはずだ」ホーナーがどの道を選ぶのか、その決断は今後のF1勢力図に大きな影響を与えることになる。アストンマーティン・ホンダの再挑戦は、彼にとっても魅力的な舞台となるかもしれない。