アルピーヌF1チームの取締役会における人事交代が、チームの株式構造に関する動きに新たな注目を集めている。ルノー・グループのCFO(最高財務責任者)であるダンカン・ミントが退任し、後任としてギヨーム・ロッソが就任した。この交代は単なる人事ではなく、少数株主であるオトロ・キャピタルの持分売却を巡る動きと密接に関係している可能性がある。
チームの所有構造が転換点を迎える中で、ルノーの意思がより明確に反映される体制が整えられつつある。ルノー主導の統治強化と新任ロッソの役割アルピーヌF1チームは、ルノー・グループが過半を保有し、エンストン拠点の運営を主導している。独立した組織として機能しつつも、取締役会にはグループ側の人材が参加する構造となっている。今回就任したギヨーム・ロッソは、ルノーのグローバルM&A(合併・買収)責任者であり、2025年10月に同グループへ加わった人物だ。さらにルノー・日産・三菱アライアンスの投資部門「アライアンス・ベンチャーズ」のマネージングディレクターも務めている。モータースポーツではなく、投資・企業統治の分野を専門とするロッソの起用は、チームの競技面ではなく資本戦略面の強化を意図したものとみられる。オトロ・キャピタルの持分売却が焦点にアルピーヌF1チームの約24%を保有するオトロ・キャピタルは、現在その持分の売却を検討している。この株式は2023年に約2億1500万ドルで取得されたが、現在はチーム評価額の上昇により6億2000万ドル以上の価値があるとされている。ただし契約上、オトロは一定期間(ロックアップ期間)が設けられており、2026年9月までは自由な売却が制限されている。また、ルノーは売却先に対する承認権を持っており、新たな株主の選定にも大きな影響力を維持している。関係者によれば、オトロ側は投資リターンの最大化を目指している一方で、ルノーはチームの長期戦略に合致するパートナーの選定を重視しているという。複数の買収候補と高まる関心オトロの持分を巡っては、すでに複数の関心が報じられている。メルセデス・ベンツが約5億ドル規模の出資を検討しているほか、米国の富豪スティーブ・コーエンの名前も候補として挙がっている。さらに、元レッドブルF1代表のクリスチャン・ホーナーも出資を模索しているとされ、将来的なF1復帰に向けた動きとして注目を集めている。こうした状況の中で、投資家として比較的受動的とされるオトロの姿勢は、チーム側との間に摩擦を生んでいるとも伝えられており、予定より早い段階での売却も現実味を帯びている。所有構造の転換点で強まるルノーの主導権今回の取締役交代は、単なる人事刷新ではなく、アルピーヌF1の所有構造が見直される局面における重要な布石と捉えられる。ロッソの専門性を踏まえれば、その役割は新規投資家の選定や取引の管理、そしてガバナンスの強化にあると考えられる。アルピーヌF1は競技チームであると同時に、ルノーにとっては投資およびマーケティング資産でもある。その中で、少数株主の構成見直しが進む今、グループとしての統制を維持・強化する動きが明確になってきている。