アレクサンダー・アルボンは、困難を乗り越え、努力を重ねて2019年にトロロッソ・ホンダからF1デビューするチャンスを掴んだ。同世代のジョージ・ラッセルやランド・ノリスに続き、アレクサンダー・アルボンもまた絶好のチャンスを掴んで2019シーズンでF1デビューするヤングドライバーのひとりだ。
トロロッソ・ホンダのドライバーとして開幕戦のグリッドに並ぶタイ国籍ドライバーについて知っておくべき情報をまとめてみた。F1史上2人目のタイ国籍ドライバーナイジェルという名の父を持ち、ロンドンに生まれ、英国・イプスウィッチの私立校で学び、同国・ハートフォードシャーの街、ホッデスドンでレーシングカートを初体験したアルボンだが、母親がタイ出身のため、F1にはタイ国籍ドライバーとしてエントリーすることになる。長いF1の歴史の中で、過去にタイ国籍で出走したドライバーは、ビーラポンパーヌデート=パーヌパン親王(タイ王国王子。エントリー名は「B.Bira / B.ビラ」)しかいない。パーヌパン親王もまた英国イートン校やケンブリッジで青年期を過ごし、F1世界選手権黎明期の1950〜54シーズンで計19戦に出走した。父ナイジェルはBTCCで活躍した元レーシングドライバー父親ナイジェル・アルボンも数々の国際的なレーシングシリーズに参戦した経験を持っているが、息子のアレクサンダーと異なるのは、ナイジェルがルーフ付きのマシンを主にドライブしてきた点だ。彼はRenault Clio Cup に参戦したあと、1990年代初頭にBTCC(英国ツーリングカー選手権)のインディペンデント・カップでRenault 19をドライブし、その後も2005〜2007シーズンの3シーズンに渡り、Porsche Carrera Cup Asiaに参戦した。一度はRed Bull Junior Teamから脱落するも、自力でステップアップした2008年に弱冠12歳でRed Bull Junior Teamに抜擢されたアルボンは、2012シーズンにスペインのチームEPICからユーロカップ・フォーミュラ・ルノー2.0シリーズに参戦した。総合38位と低迷し、Red Bull Junior Teamプログラムから脱落したアルボンだったが、翌2013シーズンにKTCチームへ移籍して同シリーズへの参戦を続けると、リザルトが伸びを見せ始めた。「マシンに乗り込むたびに、懸命に努力して自分を印象付けようとしてきた」とアルボンは語る。「僕を信じてセカンドチャンスを与えてくれたレッドブルとヘルムート・マルコ博士に深謝したい」奇しくも、2012シーズンのユーロカップ・フォーミュラ・ルノー2.0シリーズにはのちにF1へ進出するドライバーたちが揃って参戦していた。2012年のRed Bull Junior Teamメンバーには、ダニール・クビアト、カルロス・サインツ(2012年当時はF3参戦中)の姿がいた。また、当時のアルボンのライバルにはエステバン・オコンやストフェル・バンドーンもいた。さらには、ラリークロスへ転向する前のティミー・ハンセン(現在はPeugeot 208でFIA世界ラリークロス選手権に参戦中)や、2019シーズンからAston Martin Red Bull Racingに加入するピエール・ガスリー(当時16歳)なども、2012シーズンのユーロカップ・フォーミュラ・ルノー2.0シリーズに参戦していた。GP3時代のチームメイトはシャルル・ルクレールアルボンが2016シーズンのGP3に参戦していた当時のチームメイトは、今やF1で高い評価を受けるシャルル・ルクレールだった。このシーズンはルクレールがチャンピオンに輝き、アルボンは総合2位に終わったが、シーズンの合計勝利数で見ると、アルボンはルクレールの3勝を上回る4勝を記録している。ルクレールもアルボンと同じく、レーシングカートからフォーミュラ・ルノーへステップアップしたドライバーだ。ちなみに、ルクレールは2013シーズンのCIK-FIA ワールドKZチャンピオンシップであのマックス・フェルスタッペンに次ぐ総合2位を獲得している。2017シーズンにFIA F2へステップアップしたルクレールは、参戦初年度でF2史上最年少チャンピオンに輝き、2018シーズンにSauberからF1デビュー。2019シーズンからセバスチャン・ベッテルと共にFerrariを背負う彼は、素晴らしいキャリアを歩んでいる。 2018シーズンのFIA F2で大活躍F1のフィーダーシリーズとして2017シーズンにFIA F2が復活したことは、アルボンにとってもグッドニュースだった。初年度はART Grand Prixに所属し、数回の表彰台を獲得して総合10位で終えたアルボンは、2年目となる2018シーズンはDAMSに移籍。アゼルバイジャン・英国・ハンガリー・ロシアの各レースで優勝を飾った他、4度の表彰台を獲得して総合3位と大活躍を見せた。いよいよモータースポーツの頂点で戦うことになる2019シーズンのアルボンに注目しよう。
全文を読む