レッドブルの角田裕毅にとって、2025年ラスベガスGPは厳しい週末となった。しかしパドック裏では、思わぬ“追い風”が吹いていた可能性がある。2026年のレッドブルおよびレーシングブルズのラインアップは、メルセデスが現体制維持を発表したことで注目度が低かったが、ここへ来て議論の中心は再びこの2チームへ戻っている。
マックス・フェルスタッペンは2026年もレッドブルに残留、そしてアイザック・ハジャーはルーキーイヤーの躍進からトップチーム昇格が既定路線とみられる。その一方で、レーシングブルズは2026年にアービッド・リンドブラッドをデビューさせる見込みで、残る1枠を巡って角田裕毅とリアム・ローソンが争っている。この“最後の1席”に、内部の空気がわずかに傾いている、とチーム内部に密着するジャーナリストが証言した。レッドブル内部者「雰囲気は角田の方へ傾いている」英記者マット・マジェンディは、ラスベガスGP週末のパドックで感じ取った空気をポッドキャストで明かした。マジェンディはローラン・メキースに将来の決断について尋ねたところ、以下のような回答を得たという。「決断はカタールGP後になる。ただ“90%は決まっている”と言っていた」レッドブル陣営の見立ては以下の通りとみられる。■ フェルスタッペンの相棒:アイザック・ハジャー(既定)■ リンドブラッド:2026年にレーシングブルズからデビュー■ 残る1枠:角田裕毅 vs リアム・ローソンマジェンディは2人の表情や立ち振る舞いを丁寧に観察したと語る。「ローソンの方が少し落ち着いていたようにも見えたが、角田にも余裕があった。その“雰囲気”から、わずかに角田の方へ傾いている印象を受けた」ただし彼自身も、スポンサー、政治的事情、パフォーマンスの評価など複合要素が絡むため確信は持てないと補足している。ローソンは「リンドブラッドのメンター役」として高評価判断を難しくしているのが、ローソンのレース内容と“若手育成力”だ。日本GPでのスワップ以降、ローソンは着実にポイントを加算。またアゼルバイジャンでは、角田の今季ベストレースを上回る結果を残した。そしてレッドブルが非常に高く評価するリンドブラッドにとって、ローソンは“理想的なメンター”と見られている。この点は、角田にとって不利に働く可能性がある。それでも角田裕毅に“追い風”――ホンダの存在とTPC計画レッドブルが2025年をもってホンダとワークス契約を終了するのは周知のとおりだが、TPC(旧型車テスト)では2026年以降もホンダ製パワーユニットを使用せざるを得ない。そのため、ホンダとの協力関係を円滑に維持するためにも、ホンダ系ドライバーである角田裕毅の残留には一定の“政治的価値”が存在している。メキースも角田の育成に長く携わっており、完全に切り捨てるには慎重になるとみられる。決断はカタール後のスプリント週末へ 運命の最終審査レッドブルは最終判断をカタールGP後に下す。この週末はスプリントフォーマットで、ドライバー評価の材料が増える重要な機会となる。角田裕毅にとっては、ラスベガスのタイヤプレッシャー問題で失われた信頼を取り戻す最後のチャンス。ローソンにとっては、これまで通り安定感を示し続ければ十分に勝機がある。2026年レーシングブルズのラインアップは、“角田の逆転残留”か、“ローソンのメンター起用”か――。結論は、カタールのチェッカー後に明らかになる。
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