1997年のF1ワールドチャンピオン、ジャック・ヴィルヌーヴが、角田裕毅のパフォーマンス評価に異を唱え、「レッドブルは彼を過保護に扱っている」と批判した。角田裕毅は現在、予選成績でマックス・フェルスタッペンに対して21戦全敗中だが、メキシコGPではわずか0.211秒差でQ2敗退と、自身にとって今季最も接近したパフォーマンスを見せた。
決勝では、フェルスタッペンのライバル勢を妨害する戦略目的のピットストップ遅延によって、9位、あるいは6〜7位の可能性を失ったとされている。レッドブルのチーム代表ローラン・メキースも「彼が実力で取れたはずのポイントを我々が台無しにした」と認め、「裕毅はここ最近で最高の週末を過ごした」とコメントしていた。しかし、ヴィルヌーヴはSky SportsのF1 Showポッドキャストで、この評価に真っ向から反論した。「チームが『良い週末だった』なんて言う意味が分からない」とヴィルヌーヴは語った。「確かに他の週末よりは良かったかもしれない。でも“良い”週末だったのか? 全然違うよ。彼は依然としてチームメイトに大きく劣っている。チームのためのポイントも、マックスのタイトル争いの助けにもなっていない」「しかも彼にはもう経験がある。すでにピークは過ぎている。なぜか彼を過保護にしているように見えるけど、それは間違いだ。『良い週末だった』なんて言うべきじゃない。せいぜい“マシな週末だった”くらいだ」ヴィルヌーヴはさらに、2026年の新レギュレーション下でのチームメイト選定を見据える中で、角田の経験が意味を持たないと指摘する。「『経験が必要だ』という話はよく出るが、“良い経験”でなければ意味がない」とヴィルヌーヴ。「20年レースをしていても、速くなければ速くないんだ。新しいレギュレーションを理解したり、マシン開発に貢献できないなら、そんな経験は役に立たない。なぜ“十分でない”と分かっているドライバーをわざわざ起用するんだ?」「それならむしろ、ルーキーでもいい。チャンスを与えて新しいエネルギーと発想をチームに持ち込ませたほうがいい。今のままでは変わらない」現時点で、2026年のレッドブルの2台目のシート候補として最有力とされているのは、レーシングブルズ所属のアイザック・ハジャーだ。ルーキーイヤーの今季はザントフォールトで表彰台を獲得し、ランキング10位(39ポイント)につけている。一方の角田は17位(28ポイント)にとどまっている。ヴィルヌーヴ発言の背景と狙いジャック・ヴィルヌーヴは近年も辛口評論家として知られ、若手ドライバーやチーム運営に対して厳しい評価を下す傾向がある。今回の発言も、角田裕毅個人への批判というより、レッドブルのドライバー起用方針そのものを問題視した意図が強い。特に、レッドブルがシーズン終盤まで角田を擁護する発言を続ける中で、ヴィルヌーヴは「それが本当の評価なのか?」という疑問を投げかけている。彼の論点は「経験よりもパフォーマンス」「現状維持ではなく刷新」の2点に集約される。ただし、メキース代表が指摘したように、角田のメキシコGPでの走りは確実に安定感を増しており、戦略に振り回されなければポイント圏は十分可能だった。ヴィルヌーヴの見解は辛辣だが、来季以降のチーム編成を巡る議論をさらに過熱させる発言となったことは間違いない。
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