トヨタ・レーシングにとっての第80回ル・マン24時間レースは、スタートしてから8時間を経過して、様々なドラマに見舞われることとなった。TS030 HYBRID#7はニコラス・ラピエールの素晴らしい走りで、スタートから5時間終了の時点では一時、首位に浮上した。しかし、その直後に#8が最高速度330km/hに達するミュルサンヌストレートの終わりのコーナー進入で他車と接触し、コントロールを失ってタイヤバリヤに激しく衝突。
#8のドライバーであったアンソニー・デビッドソンは自力で脱出。サーキットのメディカルセンターでショックと背中の痛みを訴えているが、歩行も可能で会話もしている。 アンソニー・デビッドソンは更なる検査のために地元の病院へと向かい、チームメイトのステファン・サラザンとセバスチャン・ブエミも同行した このアクシデントにより1時間余りにわたってセーフティカーが導入された後、再スタートが切られると、#7をドライブする中嶋一貴が首位争いを展開したが、周回遅れの車に接触し、タイヤのパンクとボディのダメージを負ってしまった。 このトラブル修復で3分ほどのタイムロスでコースに戻った#7だったが、オルタネーターを交換するために更なるピットストップ。チームはこの機にリアブレーキも交換した。 この1時間以上にわたるピット作業の後、アレックス・ブルツがコクピットに収まり43位からピットアウトしたが、更なるトラブルに見舞われることとなった。 木下美明 (トヨタ・レーシング チーム代表)「モータースポーツは時にジェットコースターのようなものだ。ニコラス・ラピエールが首位に立ち、喜んだかと思えばアンソニー・デビッドソンがアクシデントに見舞われてしまった。彼が無事だったことを聞いて安心したのと同時に、TS030 HYBRIDのモノコックの堅牢さも証明することとなった。さらに、再スタートでは不運な接触を喫してしまい、それがきっかけで再びトラブルに見舞われてしまった。しかし、我々はチェッカーを受けるまで諦めずに戦い続ける」#7:(アレックス・ブルツ/ニコラス・ラピエール/中嶋一貴)3時間経過時点(ラピエール):2位(50周:トップと52秒281差)4時間経過時点(ラピエール):3位(67周:トップと1分19秒629差)5時間経過時点(ラピエール):1位(83周)6時間経過時点(中嶋一貴):2位(91周:トップと6秒368差/セーフティカー走行)7時間経過時点(中嶋一貴):19位(98周:トップと8周差)8時間経過時点(ブルツ):46位(98周:トップと25周差) ニコラス・ラピエール「まず、アンソニー・デビッドソンが無事だったことで安堵した。我々とチームのレースカーを一台失ったことは残念だ。私のスティントはとても上手く行った。最初のスティントではタイヤの振動に見舞われたため2スティントへと短縮し、次に3スティントで追い着こうとした。コースは更にグリップが増し、ハンドリングも良くなって行った。トップを捉え、激しいバトルの末に首位を奪うことができた。素晴らしいペースでル・マン24時間レースのトップを走れたことで、このプロジェクトでチームがやってきたことが正しかったのを証明できたと思う。この後もプッシュを続け、このレースからできる限り多くのことを吸収したい」#8:(ステファン・サラザン/アンソニー・デビッドソン/セバスチャン・ブエミ)3時間経過時点(ブエミ):3位(50周:トップと1分9秒200差)4時間経過時点(ブエミ):2位(67周:トップと1分16秒333差)5時間経過時点(ブエミ):4位(50周:トップと1周差)6時間経過時点(デビッドソン):アクシデントによりリタイア セバスチャン・ブエミ「我々は順調に走っていた。首位には若干の遅れを取ったものの、それでもペースは悪くなく、予定よりも多い4スティントを走り追い着くことも出来た。TS030のパフォーマンスは満足出来るものであったし、ポテンシャルを明確に示すことが出来た。そして、最も大事なことは、アンソニー・デビッドソンが、大事に至らなかったことだ。残念ながら、このような出来事は、レースでは起こりうることであり、我々の#8はレースを去ることになったが、勝利を目指して戦い続けられると信じている」