マリーナベイの夜を照らしたのは、ジョージ・ラッセルの完璧な勝利と、マクラーレンの連覇達成だった。しかしその裏で、多くのドライバーとチームが苦戦を味わった。F1公式リポーターのローレンス・バレットが、2025年シンガポールGPの勝者と敗者を振り返る。
勝者:マクラーレンマクラーレンはこの週末、3戦連続で勝利こそ逃したものの、チームとしての強さを見せつけた。ランド・ノリスとオスカー・ピアストリがそれぞれ3位と4位でフィニッシュし、1990〜91年以来となるチームタイトル連覇を確定。これで通算10度目のコンストラクターズタイトルを獲得し、フェラーリに次ぐ歴代2位の記録に到達した。残り6戦と3スプリントを残しての戴冠は、チームの安定した戦略と車体開発の進化を示すものとなった。敗者:フェラーリ伝統的にマリーナベイを得意としてきたフェラーリだったが、今年は苦戦を強いられた。シャルル・ルクレールは6位に終わり、5戦連続で表彰台を逃す結果に。ルイス・ハミルトンもブレーキの過熱に悩まされ、複数回のコース外走行が認定されて5秒ペナルティを受け、最終的に8位でフィニッシュした。この結果、フェラーリはコンストラクターズ選手権でメルセデスに25点差をつけられ、背後のレッドブルにも10点差まで迫られている。強豪チームとしての自信を取り戻すためには、次戦以降の巻き返しが不可欠だ。勝者:ジョージ・ラッセルメルセデスのジョージ・ラッセルは、キャリアでも屈指の完璧な週末を過ごした。予選ではトラックレコードを更新してポールポジションを獲得し、その勢いのまま決勝も支配。落ち着いたレース運びで今季2勝目、キャリア通算5勝目を挙げた。過去5戦で3回目の表彰台となり、ドライバーズランキング4位を固めた。メルセデスとの契約延長交渉が停滞するなかで、今回の勝利は自らの価値を示す格好の機会となった。敗者:リアム・ローソンアゼルバイジャンでキャリア最高の5位を獲得した勢いを、そのまま結果に結びつけることはできなかった。FP2とFP3で立て続けにクラッシュし、リズムを崩したまま予選14位に終わる。決勝では一時ポイント圏内に迫ったものの、最終的には15位でチェッカー。マシンの潜在能力を生かし切れず、「ヒーローからゼロへ」と落差を感じさせる週末となった。勝者:ランド・ノリスノリスは5番手スタートからの果敢な攻めで3位表彰台を獲得した。1周目のターンでピアストリとホイールを接触させながらも冷静に走りを立て直し、マックス・フェルスタッペンの後方でフィニッシュ。アグレッシブさを欠くと批判されることもあるが、この週末はその印象を一掃する大胆なドライビングを披露した。3戦連続でチームメイトより上位に入り、ピアストリとの差を22ポイントに縮めている。敗者:オスカー・ピアストリピアストリは金曜から好調で、予選ではノリスを上回る位置につけていた。しかし決勝では1周目の接触が響き、以降は思うようにペースを上げられず4位に終わった。これで2戦連続の表彰台逃しとなり、シーズン序盤の勢いを少し失っている。それでもタイトル争いの主導権は握っており、「焦らず戦い続ける」と冷静さを保った。マクラーレン、2025年F1チームタイトルをシンガポールで決定勝者:マックス・フェルスタッペンレッドブルとフェルスタッペンは、低ダウンフォースコースから高ダウンフォースのマリーナベイでも好調を維持した。予選では3戦連続でマクラーレン勢を上回り、決勝でも2位に入り4戦連続の表彰台を獲得。ピアストリとの差を63点に縮め、5連覇の可能性をわずかに残した。「まだ終わっていない」と語ったチャンピオンの表情は、再び戦意に満ちていた。敗者:アルピーヌアルピーヌの不振は依然として続いている。ガスリーは今季4度目の最下位予選となり、チームはピットスタートを選択。マシンのフロア変更などを行ったが効果は限定的で、決勝でも後方に沈んだ。一方のコラピントはスタート直後の好判断でポジションを上げ、早めのピット戦略で一時ポイント圏内を走行したものの、タイヤが最後まで持たず順位を落とした。結果として、チームは5戦連続でノーポイントという厳しい状況に陥っている。勝者:フェルナンド・アロンソアロンソは金曜フリー走行で今季初の最速タイムを記録し、週末を上々の形でスタートさせた。予選でもトップ10に入り、決勝ではスローピットストップに見舞われながらも粘り強く走行。巧みなレース運びでポジションを取り戻し、最終的に7位でフィニッシュした。ファン投票による「ドライバー・オブ・ザ・デイ」に選ばれ、ベテランの存在感を改めて示した。敗者:ザウバーザウバーはニコ・ヒュルケンベルグが予選11位と好位置につけながら、決勝ではペースが上がらず最下位の20位に終わった。ガブリエル・ボルトレートもスタート直後の接触でフロントウイングを破損し、早々に入賞争いから脱落。この4戦でわずか4ポイントしか獲得できておらず、チーム全体の失速が明確になっている。勝者:カルロス・サインツウィリアムズのサインツは、予選でDRS関連の規定違反が発覚して失格という不運に見舞われた。それでも決勝では冷静にリカバリーを図り、ミディアムタイヤでのロングスティントからソフトへ切り替えて猛追。次々とオーバーテイクを決め、10位でフィニッシュして貴重な1ポイントを手にした。イモラ〜モナコ以来となる2戦連続ポイント獲得で、再び上昇ムードを取り戻している。敗者:アイザック・ハジャーレースブルズのアイザック・ハジャーは、予選で今季11度目のQ3進出を果たし8番手からスタート。序盤は力強い走りを見せたが、中盤にパワーユニットのトラブルが発生し、1周あたり0.3〜0.4秒を失う苦しい展開となった。「マシンは素晴らしかったのに、信頼性が裏切った」とレース後に語った通り、終盤はペースを維持できず、サインツに抜かれて11位でフィニッシュ。惜しくもポイントを逃したが、速さ自体は印象づけた。勝者:オリバー・ベアマンハースのオリバー・ベアマンは、チームに4戦連続となるQ3進出をもたらした。自身も日本GP以来のトップ10グリッドを確保し、決勝ではスタート直後の接触を乗り越えて堅実な走りを披露。9位でフィニッシュし、今季5度目のポイント獲得を果たした。この結果により、ハースはザウバーとの差を9点に縮め、中団争いで存在感を示した。タイトル争いの力関係が微妙に動くシンガポールマ...