佐藤琢磨が、ダブルヘッダーでトロントで開催されたインディカー第13・14戦のレース週末を振り返った。トロントで行なわれたベライゾン・インディカー・シリーズのダブルヘッダー戦において、No.14 AJフォイト・レーシング・ダラーラ・ホンダを駆る佐藤琢磨はレース2で5位フィニッシュを飾り、今シーズン・ベストの成績を挙げた。これまで6戦続けて信じられないような不運に見舞われ、完走を果たせなかった佐藤琢磨にとっては何よりも嬉しい結果だったといえる。
カナダのオンタリオ州で迎えた日曜日の午後、佐藤琢磨はようやく不幸の連鎖を断ち切ることができたが、そこに何かの前兆があったわけではない。むしろ、この週末の始まりにおいても、佐藤琢磨の身にはインディカー・シリーズでは通常起きえないような不運が立て続けに襲いかかっていた。2回目のフリープラクティスで12番手となった金曜日の滑り出しでさえ、良い流れというわけではなかった。「昨年開発を進めていたセットアップをベースにしたマシンをトロントに持ち込みまし。けれども、今シーズンのセッティングは常に変わり続けています。マシンはまずまずの仕上がりでした。いくつかのことを試したところ、いずれもいい結果が得られました。バランスやグリップに関しては、それほどよかったわけではありませんが、悪かったわけでもありません。1回目のフリープラクティスはまずまずの結果でしたが、2回目のプラクティスでは何度も赤旗が提示され、思ったように走り込むことができませんでした。おかげで十分に確認できないまま、少し想像を交えて予選に臨むことになり、このため難しい状況に立たされました」佐藤琢磨は強敵揃いの予選グループから出走することになった。このためトップ6に食い込むことはできず、予選グループ内の8番手となり、15番グリッドからスタートすることが決まった。「僕たちのマシンは進化し、トップグループに近づいていました。フリープラクティスのときと比べれば、トップとの差はずいぶん縮まりましたが、それでもスピードはまだ不足していました。僕の予選グループには強力なドライバーが揃っていて、コンマ2秒ほどの差でセグメント2への進出を逃しました。もしも、もうひとつの予選グループから出走していたら、僕はセグメント2に駒を進めることができたはずです」土曜日の午後には雨が降り、レース1を日曜日に延期するのを決定するまでに長い時間を要した。ライアン・ブリスコー、ウィル・パワー、ファン-パブロ・モントーヤらがセーフティカーラン中にスピンを喫した為、佐藤琢磨は12番手までポジションを上げたが、結果的に雨のなかでレースを戦えなかったことで佐藤琢磨は落胆することになる。「ヒューストンのときのように雨のなかでレースができれば、もちろんよかったですよ。ところが、オーガナイザーはまずグリッドにコーション・ライトを追加設置するためにスタートを延期しました。スタンディングスタートでエンジンをストールさせると、特に雨のなかではとても危険な状況になるというのが、その理由でした。続いて彼らはスタンディングスタートの実施を取りやめました。これも順位を上げるには絶好の機会だったので、僕は早くもがっかりしていました」「水たまりもなく、川のように水が流れている部分もなかったので、ウェットレースを行なうには最適なコンディションでした。けれども、視界だけは大きな問題でした。僕は路面から立ち上る水煙の激しさに驚かされました。90mph(約144km/h)で走るセーフティカーの後ろを走っていてもまるで前が見えません。しかも、セーフティカーでさえスピンしてしまったのです! 僕にとってレースが延期されたのはとても残念でしたが、安全性の問題に対して異論を唱えることはできません」さらに残念なことに、日曜日に延期されたレース1では、オープニングラップでルカ・フィリッピがシモン・パジェノーをスピンに追い込むアクシデントが発生してしまう。「またしても行き場のない不運に見舞われるなんて、信じられませんでした。僕は、多重アクシデントが起きそうなターン1からターン3までを慎重に通過しました。ところが、ターン4を通り過ぎたところで何かが舞い上がり、煙が立ち上っているのが見えました。そこでまずはブレーキングし、事故を避ける準備をしましたが、僕が事故現場に着いたときにはすでに2、3台のマシンがコースを塞ぐようにして止まっていました。これで僕もマシンにダメージを負いましたが、さらに悪いことに、サイモンがスピンターンしようとして僕のマシンに突っ込んできたのです。まったく、ひどいことでした」「メカニックたちがピットでマシンを修理してくれました。彼らは素晴らしい仕事をしてくれて、マシンに問題がないかどうかを確認するために10周ほど走ることができました」 ピットで長逗留した佐藤琢磨は、その日の午後に行われるレース2に備えてマシンが万全の状態にあることを確認するために周回を行なったのである。日曜日にレース1を行なうことになった影響で、レース2の予選はキャンセルされ、スターティンググリッドはチャンピオンシップのポイントランキングで決めることとなった。ここのところ不運続きだった琢磨にとって、これはさらに悪い展開といえた。「どうやら不運の連鎖はまだ終わっていなかったようです!」 佐藤琢磨は冗談めかしてそう言った。「僕は最後列のグリッドからのスタートで、これもまったくいいことではありません。しかも、グリッドについてみると、スタートの合図を示すライトが見えないことに気づきました。仕方ないので、他のドライバーが発進したのを見てからスタートすることにしました」「それでも、僕たちはいくつかのプランを用意していました。スタートではもちろん柔らかめのレッドタイアを装着しました。レッドタイアは、最初は速いものの、すぐにデグラデーションが起きてしまいます。燃料の面からいえば1ストップ作戦も可能でしたが、敢えて2ストップとしてレッドタイアで走る周回数を減らすという考え方もありました」間もなく、カナーンがターン3を直進してしまったためにイエローが提示される。「最初のイエローのタイミングでピットストップを行うこととし、素早くタイア交換の義務を終了させることにしました。ただし、僕たちは、グリーンフラッグが提示されるときにピットに戻るという変則的な戦略を採ることになってしまったため、コースに復帰したときには20秒以上の遅れをとっていました。でも、これは問題ありません。なぜなら、この後で判断の難しい空模様になることがわかっていたからです。そ...
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