佐藤琢磨が、インディカー第9戦ミルウォーキーのレース週末を振り返った。佐藤琢磨は、何度もチャンピオンに輝いたダリオ・フランキッティを僅差で抑えて7位でフィニッシュ。250ラップを走りきってリードラップでフィニッシュしたドライバーはたったの8人しかいない激戦だった。そして、佐藤琢磨は、多くのポイントを獲得してランキング4位に浮上した。
だが、実際のところ、No.14をつけたAJフォイト・レーシングのダラーラ・ホンダはこの日のレースを完全に席巻。佐藤琢磨は、もう少しでインディカー・シリーズでの2勝目を、それもオーバルの初優勝を逃した。リードラップをもっとも多く走行したドライバーに与えられるボーナスポイント(佐藤琢磨は実に109周をトップで周回した)も手に入れたのだが、信じられないほど悪いタイミングでイエローコーションとなったため、佐藤琢磨はまたも勝利を取り逃がした。予選を15位で終えた佐藤琢磨は、その影響でトップランナーの多くとは異なるタイミングでピットストップしていたが、この予選結果でさえ、AJフォイト・レーシングにとっては好成績というべきものだった。「大きな期待を抱いてミルウォーキーにやってきました。このレースをとても楽しみにしていたんです」と佐藤琢磨はコメント。「このコースは世界で一番古いオーバルで、とてもユニークな性格のため、ここを走るのは大好きです。しかも、バンクがないからクルマをコントロールしながらずっと限界で走り続けることになる。コーナーをアクセル全開で抜けることはできません。とてもチャレンジングなコースです」「残念ながら、AJフォイト・レーシングはミルウォーキーで好成績を収めたことがなく、驚いたことに今回の15番グリッドはチームのベストグリッドと並ぶものだったようです! だから、チームはここにやってきたとき、少しナーバスになっているようでした。それに、僕のエンジニアであるダン・ホリデイは去年ミルウォーキーに来ていなかったそうです」「ミルウォーキーのコーナーはとてもフラットです。もちろん左コーナーだけで、ここを150mph(約240km/h)ほどで駆け抜けます。オーバル用のスタッガーを用い、キャンバーも特殊な設定になりますが、コースにバンクがないため、セットアップはロードコースと基本的に同じものを用います」「最初のプラクティスは30分間ととても短く、クルマのバランスにはあまり満足がいかなかったので、いくつかの部分を調整した結果、2回目のプラクティスではまずまず満足のいく仕上がりとなりました。そこで予選シミュレーションを行ったところ、とても力強い手応えを得ることができました」「クルマの調子がいいと気分までよくなります。本当に、勇気づけられているような気持ちになるのです。けれども、予選は少し期待とは異なる展開になりました。2ラップ走るうちの1ラップ目(これは総合11番目のスピードでした)はよかったのですが、2ラップ目はターン3でアンダーステアになってしまい、ラインがアウト側にはらんでマシンが滑り出し、ターン4ではどきっとする状況に追い込まれたのです。スピードも落ち込んだため、これで平均速度が2mph(約3km/h)ほど低下しました。それでもリーダーボードのトップに立ったのは、僕が4番目の出走だったからです。しかも、この段階ではまだ路面が埃っぽかったので、路面がきれいになってから走行したドライバーに次々と先を越され、結局15番手となりました。これはとても残念な結果でした」決勝レース前のウォームアップは行われなかったが、プラクティスでユーズドのファイアストン・タイアで走行したときのデータから、摩耗したタイアでもタイムの落ち幅が小さいことがわかっていたので、佐藤琢磨は自信満々でレースに挑んだ。「最初のスティントでの調子はあまりよくありませんでした」と琢磨。「バランスが少しずれていて、順位を上げることができなかったのです。だから、まるで高速列車のように一列に連なって走っていました。最初のコーションが出た時点で、各チームはふたつの戦略に分かれました。僕はピットでクルマをアジャストしてと訴え、ピットアウトしたときにはドンピシャのセッティングになっていました。メカニックたちが素晴らしい働きをしてくれたおかげで素早くピットアウトできたほか、僕はフレッシュタイアを履いていたので、僕とは違う戦略で走るドライバーたちに対して非常に有利な立場に立つことができました」最初に佐藤琢磨がイン側のラインに飛び込んだのは、リスタートでアレックス・タグリアーニがスピンしたのを避けようとしたときのことで、直後にはペースカーが導入された。「ものすごい急減速をしなければいけませんでした。おまけに、スピンしているアレックスと目が合ってしまいました! 彼の大きなふたつの目が、ヘルメットから飛び出してくるんじゃないかと思ったくらいです!(笑)」佐藤琢磨にとっては、ここからが本当のレースとなった。次のリスタートでは瞬く間に12番手まで浮上。そこからさらに順位を上げていき、60周目にはトニー・カナーンを追い越して8番手に、そして64周目にはエド・カーペンターを仕留めて7番手となった。その数周後、トップグループを構成していたドライバーたちが最初のピットストップを行ったため、佐藤琢磨はトップに立ったのである。それから20周ほどを走行したところで佐藤琢磨はピットストップ。すぐにコース上でウィル・パワーをオーバーテイクすると、マルコ・アンドレッティのマシンがストップしたため、再びコーションとなった。これでトップグループが2度目のピットストップを行ったので、佐藤琢磨は再びトップに浮上。続いて108周目にグリーンが提示された。この頃になると佐藤琢磨は手のつけようのない速さを示すようになり、30ラップ後にはエリオ・カストロネヴェスを5.5秒もリードすることに成功していた。「まさに絶好調でした。ドライブしていて楽しくて仕方なく、ほぼ毎周、誰かをオーバーテイクしていました。トップ10に入るまではあっという間で、それからもずっと順位を上げていきました。そしてリスタートでは大きく後続を引き離していったのです」そして、佐藤琢磨はラップダウンになるまいとして懸命にもがくカーペンターの直後につけることとなる。おかげで、これからほぼ10周の間に、カストロネヴェスは行く手を阻まれている佐藤琢磨に追いついたのである。「あれはいささか納得できませんでした。僕がかつて戦っていたF1とインディカー...
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