雨に翻弄された2025年F1イギリスGPは、ランド・ノリスが悲願の母国初勝利を飾り、ニコ・ヒュルケンベルグが239戦目にしてついにF1初表彰台を獲得するという、劇的な展開となった。予選ではドライ、決勝ではウエットからドライへと変化する難コンディションのなか、ベテランと若手がそれぞれの強さを見せつけた。そんな中、F1恒例のパワーランキングが更新された。
週末のパフォーマンスを純粋に評価するこのランキングでは、ノリスやヒュルケンベルグのほか、オスカー・ピアストリやルイス・ハミルトンらも高評価を獲得。各ドライバーの評価と最新の順位表が発表されている。F1パワーランキングは、F1.comの5人の審査員がグランプリ終了後に各ドライバーを評価し、週末を通してのパフォーマンスに応じて10点満点で採点。専門家のスコアを平均してレーススコアを作成し、そのスコアは総合パワーランキングのリーダーボードでシーズンを通して集計される。日曜の決勝はニコ・ヒュルケンベルグにとってF1通算239戦目となった。2010年にウィリアムズからデビューしたドイツ人ベテランは、Q1敗退で厳しい展開が予想されたが、レース巧者ぶりと経験を活かして、ウエットからドライへと変化する難しいコンディションの中で19番手から3位に大躍進。長年追い求めてきた表彰台のトロフィーをついに手にした。ノリスは週末前、「これまでの全トロフィーを母国優勝と交換したい」と冗談交じりに語っていた。予選ではマックス・フェルスタッペンとオスカー・ピアストリに後れを取ったが、決勝では冷静な走りを見せ、レッドブルのフェルスタッペンがスピン、マクラーレンのチームメイトがペナルティを受けたことを的確に活かして勝利をもぎ取った。ピアストリはシルバーストンでのレース開始直後から非の打ち所がない走りを披露。フェルスタッペンを抜いて首位に立ち、セーフティカー導入まで快走した。しかしそのセーフティカー中の走行で隊列を詰めすぎたとして10秒加算ペナルティが科される。2位でフィニッシュしたものの、本人はそれ以上の結果を望んでいた様子だった。ルイス・ハミルトンはフェラーリに移籍後、初の母国GPで再び表彰台を狙える位置につけた。予選5番手からスタートし、力強い走りで決勝3位を目指したが、ヒュルケンベルグの猛追には敵わず4位でゴールとなった。ピエール・ガスリーとアルピーヌは、プラクティスでは全く振るわず、早期予選敗退を覚悟していた。しかしフランス人ドライバーはマシンを巧みに操り、Q3進出に成功。決勝でもウエットコンディションを味方につけ、8番手から6位に順位を上げてフィニッシュ。レース後はほとんど言葉を失っていた。ランス・ストロールはウエットで強さを見せることで知られるが、今回もその例に漏れなかった。ドライの予選では17番手と苦戦したものの、決勝では雨の中を突き進み、一時は3位を走行。路面が乾き始めてからは7位に後退したが、アストンマーティンにとっては価値あるポイントとなった。フェルスタッペンは予選で素晴らしいラップを決め、マクラーレン勢やフェラーリ、メルセデスのラッセルを抑えてポールポジションを獲得。しかしローダウンフォースのセットアップはウエットでは不利に働いた。序盤は首位を維持したものの、ピアストリのマクラーレンに抜かれ、さらにセーフティカー中のスピンで勝利争いから脱落。最終的には5位まで挽回した。アレックス・アルボンは、予選の進行に不満を抱き、「もっと上のポジションを狙えた」と感じていた。だが日曜の変わりやすい天候を活かし、13番手スタートから力強い走りで8位フィニッシュを果たした。フェルナンド・アロンソは予選でアストンマーティンを再びトップ10に導いた。決勝では堅実な走りで9位に入り、ストロールと共にチームに今季初のダブル入賞をもたらした。アロンソ自身はさらに上位も狙えたと感じていたようだ。オリバー・ベアマンにとって初の母国GPは波乱に満ちたものとなった。ハースのルーキーは予選でQ3進出を果たして地元ファンを沸かせたが、プラクティス中の赤旗違反により10グリッド降格処分。18番手スタートからは激しい追い上げを見せてポイント圏内に浮上するも、終盤にチームメイトのエステバン・オコンと接触し、得点を逃すこととなった。惜しくもランク外ジョージ・ラッセル、エステバン・オコン、カルロス・サインツJr.は、いずれも僅差でトップ10入りを逃した。ラッセルは予選4位と好位置につけたが、決勝では戦略上の判断が裏目に出て順位を落とした。オコンはポイントを狙って奮闘したが、リアム・ローソンやベアマンとの接触により後退。サインツはいくつかの好走を見せながらも、またしても不運に見舞われた週末となった。