マックス・フェルスタッペンが2026年F1シーズンに向けて新たなチームメイトを迎える準備を進める中、元F1ドライバーのカルン・チャンドックは、レッドブルのドライバー起用問題は最終的に「哲学的な決断」に行き着くと指摘した。焦点は明確だ。フェルスタッペン個人のドライバーズタイトルの“威信”を最優先するのか、それともコンストラクターズタイトルも同時に狙うのか。もし後者も求めるなら、2人のドライバーが同時に機能するマシンを設計する必要がある。
“2台目を戦いに加えたいのか”という根本問題レッドブルは2018年末にダニエル・リカルドを失って以降、セカンドシートに苦しんできた。ピエール・ガスリー、アレクサンダー・アルボン、セルジオ・ペレスと入れ替わりが続き、ペレスは2021年アブダビGPでの献身的な走りによりフェルスタッペンから「レジェンド」と称された一方、最終的には2024年シーズン終了後にチームを去った。その後、リアム・ローソンが昇格したが、わずか2戦でレーシングブルズに戻され、角田裕毅と入れ替わる形に。角田裕毅はシーズンを完走したものの、22戦で30ポイントに留まり、2026年のレースシートを失う結果となった。そして、フェルスタッペンの2026年F1チームメイトとしてアイザック・ハジャーが起用された。チャンドックはSky Sports F1 Showで次のように語っている。「最終的にはレッドブルの哲学的な決断に戻る。コンストラクターズを狙うなら、2人が運転できてポイントを取れるクルマを作らなければならない。マックスはドライバーズで僅差まで迫ったが、コンストラクターズでは大きく遅れていた」「もしドライバーズの威信を最優先し、すべてをマックスに集中させるなら、マクラーレンが抱えるようなチーム内バトルの問題は避けられる」「どれだけ2台目を戦いに加えたいのか。それが経営陣に突き付けられている哲学的決断だ」“もし”が示したセカンドカーの重要性チャンドックは、2025年シーズンを振り返り「極端な例だった」とも指摘する。「もしマックスが勝った2〜3戦で、もう1台が2位に入っていたらどうなっていたか。角田がその位置にいれば、ノリスやピアストリをさらに後方に押しやれた。あれはチャンピオンシップになり得た」「マックスを倒す必要はないが、2021年のチェコ(ペレス)のように、定期的に表彰台を取れるレベルには引き上げる必要がある」規則刷新がもたらす“公平なスタートライン”ハジャーにとって追い風となるのは、2026年F1レギュレーションによる完全なリセットだ。2026年のレッドブル・フォードRB22は、フェルスタッペンにとっても未知の新車となる。ハジャーはアブダビで次のように語った。「マックスがクルマを知っているわけじゃない。全員がゼロからスタートする。タイミングとしては最高だ。とても運がいいと思っている。クルマがどちらかの方向に行くなら、僕もそこにいる」もっとも、当初はフェルスタッペンに及ばない可能性も認めている。「最初の1カ月は自分が遅いことを受け入れるのが目標だ。そういう心構えでいれば、データを見て“まだ到達できない”と感じても準備ができる。とてもフラストレーションが溜まるだろうけど、分かっていれば対処できる」レッドブルが2026年に向けて下すべき決断は、単なるドライバー選択ではない。1台目にすべてを賭けるのか、2台体制で勝利を積み重ねるのか。その“哲学”が、ハジャーの未来だけでなく、チーム全体の行方を左右することになりそうだ。