F1ポルトガルGPのレッドブル・ホンダとメルセデスとの戦いは、土曜日の予選Q2でのチーム判断ですでに決していた。今シーズン、レッドブル・ホンダはマックス・フェルスタッペンにQ2をミディアムで突破させ、メルセデスに対して第1スティントを長くすることで突破口を開こうという戦略をしばしば見せてきた。
しかし、今大会ではその逆となりメルセデスがミディアムスタートという戦略を採り、フェルスタッペンはソフトでのスタートとなった。アルガルベ・サーキットは初レースだっただけでなく、最近、路面が舗装されたことで週末を通して路面コンディションが一貫しなかった。また、FP2が2回の赤旗によって制限され、風が強いコンディションも邪魔して、タイヤについての見極めが難しかった。結果として、アルガルベ・サーキットでの正解タイヤはミディアムで、最悪のタイヤはソフトだった。ラップタイム的にもソフトとミディアムにほぼ違いはなく、むしろメルセデスがQ3で使ったようにミディアムの方が速いタイヤだった。それは1周目の接触で最後尾まで順位を落としてミディアムに交換したセルジオ・ペレスが5位まで順位をあげつつも、ソフトでの第2スティントで失速して残り2周で2つ順位を下げことからも示されている。レース開始直後の雨によって序盤はミディアムが不利な展開となるなかで、レッドブル・ホンダはソフトタイヤにスイッチを入れることができず、メルセデス勢を先行するチャンスを逃した。その後、雨がやんで路面が乾くとソフトタイヤの摩耗はどんどん激しくなった。ピレリが予想するソフトタイヤに1回目のピットストップのタイミングは18周だったが、12周を過ぎた段階でマックス・フェルスタッペンは『左フロントが死んだ』と無線。後続でミディアムスタートのシャルル・ルクレールが5秒以内にいたこともあり、23周目までピットに入れなかった。ミディアムに交換したその時点でトップとの差は約15秒。勝負はついていた。ルイス・ハミルトンは40周、バルテリ・ボッタスは41周まで第1スティントを伸ばしてハードタイヤに交換した。ミディアムタイヤでのマックス・フェルスタッペンのペースは良く、バルテリ・ボッタスとの差を10秒まで縮めたが、それ以上に迫ることはできなかった。マックス・フェルスタッペンは「今日は、いくつかの理由からソフトタイヤがうまく機能しなかったけど、ミディアムに交換してからはいいペースで満足いく走りができた。そのときにはメルセデスと大きなギャップができていたので、できることはあまりなかった」と語る。レッドブルのF1チーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーも「今日のタイヤはちょっとした黒魔術だった。つまり、ソフトタイヤで走るのは困難で、ミディアムタイヤがレンジのなかでベストなタイヤのようだった」と総括する。「後から指摘するのは簡単だが、再び予選を行うことができたなら、明らかにミディアムでのスタートを目指しただろう」「マックスはファーストラップでなんとか食らいついたが、アレックスは順位を落とした。そこからの彼は落ち着き、当然、できる限りタイヤをケアしていた。マックスはまずまずの距離を保っていたし、ミディアムに交換して以降ははるかに満足していた」「だが、もちろん、その時点でメルセデスはかなり先にいた。それが我々のいた場所だ。マックスにとって3位は最適だったと思うが、明らかにアレックスにとってはもっと難しい午後だった」クリスチャン・ホーナーは、チームはアレクサンダー・アルボンが摩耗によってひどく妥協を強いられた理由を調査する必要があると語る。「明らかに彼にとっては難しいレースだった。だから、すべてのデータ、すべての情報を見て、たとえば彼のタイヤの摩耗が大幅に高かった理由を理解する必要がある。調査し、理解しなければならないことはたくさんある」ホンダF1のテクニカルディレクターを務める田辺豊治も今大会はタイヤが大きなカギを握ったと語る。「新しい舗装ということで、走行を重ねるにしたがってラバーが乗ってグリップが向上するかなというところもあったのですけど、どうもそうではない感じでした。タイヤのグリップを上げる、タイヤのマネジメント、特に温度的なところも含めて非常に難しい週末でした」と田辺豊治は語る。「今週末の結果でいうとミディアムタイヤがベストだったと思います。それぞれ使い方の中で工夫をしてやったと思いますが、その辺の影響は大きいです」最終的に今大会もマックス・フェルスタッペンはトップから34秒差という大差をつけられてレースをフィニッシュした。