レッドブル・ホンダF1は、シルバーストンでの2週目となる70周年記念GPをメルセデスから0.8秒差でスタートした。同じシルバーストンで開催されたF1イギリスGPで、レッドブル・ホンダはメルセデスに予選で1秒差という大差をつけられた。決勝では棚ぼた的に2位表彰台を獲得したが、レースペースでも0.3~0.4秒の差があった。
当然、3~4日のインターバルでその差が縮むことはない。マックス・フェルスタッペンはFP1で0.727秒差の3番、FP2で0.831秒差の4番手だった。逆にFP1ではレーシング・ポイントに0.049秒差に迫られ、FP2では0.16秒上回られた。先週末は敵ではなかった2チームが戦闘力を向上させる一方で、派手なスピンこそなかったがレッドブル・ホンダのスピードに進歩は見られていない。今週末はタイヤが1段階柔らかくなり、先週は1ストップ戦略が主流だったが、今回のレースでは2ストップが主流になると考えられている。しかし、マックス・フェルスタッペンはその違いが結果を左右することないと語る。「明日の予選では後ろのマシンとは接戦になりそうだけど、レースでは先週と同様、一人旅のような状況が続くように思う」とマックス・フェルスタッペンはむしろ後続を意識している。「今日使用したソフトタイヤは先週よりも柔らかいもので非常に摩耗が激しいので、決勝での1ストップ戦略はほぼ不可能だと考えている。レースでは多くのマシンが2ストップ戦略をとると思うけど、だからと言って先週から結果が大きく変わるとは思わない」「再び孤独なレースになるかもしれない」とメルセデスには追いつけず、3位がベストリザルトになることをすでに覚悟しているようだ。アレクサンダー・アルボンの状態にも変化はみられない。FP1では0.387秒差の6番手、FP2では0.523秒差の11番手とチームメイトとの差は縮まる気配はない。FP2では姉妹チームのアルファタウリ・ホンダにも迫られる有様だ。レーシング・ポイントとルノーの改善を考えれば、2強チームの一角としての最低限の結果である4位は難しいかもしれない。そして、不可解なのはホンダF1がレッドブルの2台に新品エンジンを投入したことだ。13戦しか確定していない現状では年間使用基数は2基までとなる。15戦を超えれば3基となるが、いずれにしろ投入のタイミングとしては早い。ホンダF1のテクニカルディレクターを務める田辺豊治は「シーズンを通してのPU使用戦略を考慮したうえで、アストンマーティン・レッドブル・レーシングの2台に2基目のPUを投入しています。今後は1基目のPUと併用しながらレースを戦うことになります」とフレッシュなエンジンをプールしたことを強調している。しかし、メルセデスとの差が歴然としている高速サーキットであえて新品エンジンのマイレージを消費する意味はあるのだろうか? 逆に見れば、後続とのギャップを維持するには4戦を戦ったエンジンでは耐えられないのだろうか?全チームを見ても、ホンダ以外で2基目を投入しているのは初戦でエンジントラブルが発生したルノーF1のダニエル・リカルドのみ。ここで先手を打つことに大きな意味は見受けられない。今後、モンツァ、イモラ、ムジェロと高速サーキットが待ち受けている。フレッシュなエンジンで戦えたとしても、グリッド降格ペナルティの可能性はレース数が確定していない現状ではリクスとなる。昨年、メルセデスはタイトルを決めるまで使用基数制限内で戦っていた。タイトルを目指すはずの今年。“戦略的”の意味が後半にどのような展開をもたらすのかが気になる金曜フリー走行となった。