レッドブル・ホンダにとってF1イギリスGPの結果は素晴らしいものにはならなかったが、マックス・フェルスタッッペンが予選で記録した最速ラップタイムは、パーセンテージ的にはシーズンを通じて最もポールポジションのタイムに近かった。F1オーストリアでの優勝後のシルバーストンでは、フランスGPでホンダF1が導入した“スペック3”エンジンの進歩しただけでなく、レッドブルによる空力面での進歩も確認されることになった。
マックス・フェルスタッッペンは、F1オーストリアGPでの新しいフロントウイング導入以降、ようやくマシンのフロントとリアが連携していると感じており、以前のようにリアが不安定になることなくコーナー全体を進入スピードで走れるとようになったと報告している。旧型ウイングと新型ウイングの外見上の違いはごくわずかであるが、それに見合わず、メルセデスがF1スペインGPでみせた大幅な改善と同程度の違いをもたらしている。新型フロントウイングの2つの変更は、エレメントのシャシー側の小さな外形変化とエンドプレートの再形成(長さの3分の2の上縁が下向きに曲がっている)である。マックス・フェルスタッペンのレッドブル・ホンダ RB15:上図は中国でのフロントウイング。下図はオーストリアでアップデートされたフロントウイング。これらの変更の組み合わせることは、バージボードの3つ目のエレメントにある小さいカットアウトの周囲に供給される気流を増やすことを目指しているように見える。このカットアウトは、バージボードに流入する気流の速度を上げる渦流を生成し、その周囲の気流の形状を変化させて渦流をさらに強くする。この気流が十分なエネルギーを持たない場合、アンダーフロアとボディ側面に十分な気流を供給するのが難しくなる。アンダーフロアもしくはボディ側面の気流を損なうことなく、十分な気流を供給できる閾値を超えるようにその渦流の力を増強すればよい。エンドプレートの変更は、内側の変更とも関連しているかもしれない。エンドプレートウォールの高さを下げたことは、ウイングエレメントの外側が過負荷になっていたことを示唆しており、エンドプレートの高さを下げることで、ウイングのその部分の圧力の一部を解放し、その代わり、フロントホイール周囲のアウトウォッシュ強化に利用できる。エレメントの外形にわずかな変更を加えただけで、外側の縁での圧力が、閾値を超えさせることができたのかもしれない。ウイング周囲には操作するべき気流があまりに多いが、最も方向づけするべき気流は圧力抵抗によって決まる。レッドブル・ホンダRB15のフロアにある小さいベーンは、アウトウォッシュ気流をディフューザーに向かう気流から分離させる。エアロダイナミシストは、このホイール周囲のアウトウォッシュ気流をマシンの長さ方向に沿った外側に留めておき、サイドポッドを通過し、ディフューザーの上部と側面に向かうダウンフォース生成気流を妨害しないようにしている。図に示すフロア外側の小さいベーンは、このふたつの気流を分離させるのに役立つ。レッドブルは、伝統的にフロントとアンダーフロアから多くのダウンフォースを生成するのが非常に得意だった。しかし、今年ウイング下のターニング・ベーンが3つに制限されたことでそのアドバンテージがなくなり、それを取り戻すのに長時間かかってしまった。しかし、突破口を開いたことで、さらなる進歩が期待される。
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