2026年に行われるF1の大改革は、新しいマシンや異なるエンジン規定だけにとどまらない。現代F1において極めて重要な構成要素であるタイヤも、全面的に刷新されることになっている。当初、FIAは重量削減を目的として、2026年から16インチホイールへと変更することを目指していたが、唯一のタイヤサプライヤーであるピレリは、ロードカーとの技術的関連性など複数の理由からこれに反対した。
その結果、F1は引き続き18インチのタイヤを使用することとなった。ただし、新しいホイールは幅が狭くなり、外径もやや小さくなる予定であり、これにより2026年仕様のマシンの軽量化にも一定の効果が見込まれている。ミュールカーは2026年型マシンを完全には再現できない2026年仕様のタイヤは構造もコンパウンドも完全に新設計となっており、現在すでに広範なテストが進められている。直近ではアストンマーティンとザウバーがシルバーストンで走行を行った。しかしこの開発は非常に複雑だ。というのも、ピレリは2026年型マシンを使用してタイヤをテストすることができず、「ミュールカー」と呼ばれる現行マシンを改造した車両に頼らざるを得ない状況にある。「これまでの開発には満足しているが、もちろん多くの疑問点がある」とピレリ・モータースポーツ責任者のマリオ・イゾラは英オートスポーツ誌に語った。「まず第一に、それはマシンに関係している。我々はミュールカーを使っている。チームは、できる限り代表性のあるマシンを提供しようと努力してくれているが、それでもなお現行マシンだ」「つまり、それらは異なる空力パッケージを持ち、ダウンフォースレベルも違う。実際、現行マシンが発生させるダウンフォースの方が、来年のマシンよりも大きいと我々は見積もっている」「このことが、マシン性能に対して最適な位置に来るコンパウンドのレンジを見極めるのを難しくしている」「もしマシンが、想定よりもタイヤにストレスをかける、あるいは逆にかけないとしたら、タイヤが攻めすぎになったり、守りすぎになったりするリスクがある。なぜなら、2026年に何が起きるのか、はっきりしたイメージが持てないからだ」過去の成功が楽観的な材料にイゾラは、過去の成功体験を引き合いに出し、前向きな見通しも口にしている。「2021年に18インチタイヤの開発を行ったとき、それは2022年に非常によく機能した」「新しいマシンでの最初のシーズンでも、タイヤに対して大きな変更は必要なかった」「もちろん、微調整は常に必要だ。だから2027年には、2026年とは違うタイヤが登場することになるだろうと考えている。レギュレーションが実際に1年動き始めれば、より理解が深まるからだ」2026年仕様タイヤは“計算された推測”それまでは、ピレリは多くのパラメーターと情報源をもとに、ある程度“計算された推測”を行うしかない。ミュールカーはそのひとつだが、絶対的な基準にはなり得ない。「我々はミュールカーでのテストだけに依存するわけにはいかない」「トラックから得られる情報を、各チームのシミュレーション、彼らのシミュレーターが示す2026年像、我々自身の仮想モデル、そしてタイヤの熱機械モデルと照らし合わせなければならない」「だから、モデリング部門、R&D、テスト部門、素材部門、その他多くの部門が連携して非常に多くの作業をこなしている」「それに、チームごとに用意するミュールカーにも違いがある。各チームがそれぞれ異なるアプローチで車両を準備しているからだ」2026年のダウンフォース低減を再現するために、チームは通常よりも明らかに小さなウイングを装着しているが、それだけが調整点ではない。「いや、それはウイングだけの話ではない。新しいタイヤは直径が小さいので、車高も変える必要がある」「だからFIAの認可のもとで、最も代表性のあるミュールカーを作るために、いくつかの改造が施されている」「とはいえ、チーム間での差異は依然として存在している。すべてのチームとテストを行うことは、全体像を把握する上で役立つし、各ミュールカーの違いを理解する上でも有意義だ」「ただ、最初の質問に戻るとすれば、我々は全体として進捗にはかなり満足しており、2026年にはバランスの取れた製品が提供できると信じている」2026年タイヤのテストは8月5〜6日にハンガロリンクで再開され、その後モンツァ、ムジェロ、メキシコシティで追加セッションが予定されている。