波乱のオーストリアGP決勝でミルが4位獲得2週連続でレッドブルリンクでの開催となったオーストリアGP決勝。天気予報通りMotoGPライダーがグリッドに並んだタイミングで上空を暗い雲が覆い始め、各チームがあらゆる天候に備えてレース戦略を立てながら騒つく中、86,000人の観客達がレッドブルリンク名物のエアショーを楽しみながら28周で行われるMotoGP決勝のスタートを待ち望む。観客席では様々な色のフラッグが振られ、久しぶりにサーキットに多くの歓声が響き渡った。
チームスズキエクスターのふたりのライダーはまずまずのスタートを決め、ジョアン・ミルはグリッド位置と同様の7番手をキープ、アレックス・リンスはわずかにポジションを上げたが、その後ラインをはずして大きく順位を落としてしまい16番手でオープニングラップを終える。ドライレース宣言がされた決勝だが1周目ですぐに白旗が掲げられ、マシン交換のためのピットインが許可されるものの、レース前半は雨が降ることなくそのままレースは進行していく。ミルが6番手、リンスが11番手に迫り、共に猛チャージを開始したレース8周目、サーキットの各マーシャルポストで雨を知らせる旗が提示されるが、ミルは6番手を走行するジャック・ミラー(ドゥカティ)をそのまま追い続けてオーバーテイクして、さらに前を走る5台のトップグループに標的を定める。ふたりのライダーがそれぞれ5番手、10番手にポジションを上げた後、急に雨足が強くなり、レースの展開を大きく変える。リンスは残り5周でジャック・ミラー(ドゥカティ)と共に最初にピットインし、ウェットセッティングのマシンに乗り換えて即座にピットアウトする。それから数周後、雨はさらに強くなりトップグループのライダー達が揃ってピットイン。ミルも同じタイミングでピットに向かいリンス同様ウェットセッティングのマシンで再びコースに戻り、残りの周回でスリックタイヤのまま走っていたライダー達を1台ずつ慎重にオーバーテイクしながら4位までポジションアップ。難しいコンディションの中、貴重なチャンピオンシップポイントを追加した。早めのピットインを選択したリンスは14位でレースを終えた。ミルはチャンピオンシップランキングでは3位に留まるものの、オーストリアGPを終えて2位のフランチェスコ・バグナイア(ドゥカティ)と同ポイントとなった。佐原伸一 プロジェクトリーダー&チームディレクター「同じサーキットで2週連続開催となり、我々のライバルも戦闘力を上げてきたので今日は厳しいレースとなることを予測していました。 レース中、ジョアン、アレックスともタイヤグリップに苦しみましたが、ジョアンは乗り方を調整しながらトップグループに留まり、レース終盤に雨用マシンに乗り換えた後もステディに走って貴重なポイントを獲得したのは、さすがチャンピオンであると感じました。 アレックスは1周目にコースアウトしそうになり順位を落としましたが、安定したペースでリカバリーしていたので、雨用マシンに乗り換えるためのピットインが早過ぎたのが残念でした。 次戦シルバーストーンでは今回我々が学んだことを活かして表彰台を狙っていきます。」河内 健 テクニカルマネージャー「ラスト数周で雨が降り出したせいで非常に難しいレースとなってしまいましたが、天候に対する戦略も含め、結果は結果として受け止めなくてはならないと思っています。ジョアンが4位で終えることができたことは結果的にさほど悪くなかったと思いますが、アレックスは少し残念な結果でした。いずれにしても我々が反省しなくてはならないことは雨が降り始める前までのマシンの状態が先週に比べて戦闘力がなかったことで、そこはしっかりとデータを検証して次戦に向けて対策したいと思います。引き続きマシンのパフォーマンスを上げるべく策を施し頑張っていきますので応援よろしくお願いします。」ジョアン・ミル「今日初めてレース中のマシン交換を経験したけど、本当にドキドキだったよ。雨が降り出した時、路面の状況を見ながらどのタイミングでピットインするべきかをずっと考えながら走っていたんだけど、トップグループのライダー達が一斉にピットに向かったから自分もそのタイミングで入ることにしたんだ。路面がかなり濡れてきて滑りやすくなっていたから、多分あのピットインのタイミングは正しかったと思う。レース終盤はもう何がどうなっているのか全く分からない状態で、スリックタイヤとウェットタイヤで走るライダーが混在していたし、ものすごくスロー走行をしているライダーがいたりとかなり危険で、みんなチェッカーを受けるまで自分が何位を走っているのかも理解していなかったと思うよ。あんな奇妙な経験は初めてだったね。ドライの時のフィーリングは悪くなかったけど、いつもよりトラクションが悪かったからしっかりデータを見て次戦に向けて改善する必要があると思っている。正直雨が降り出した時、そのままスリックで残り数周を走りきれば優勝できる可能性があるかもしれないと思ったりもしたけど、リスクを負わずに4位で終えたことは賢明な判断だったと納得しているよ。」アレックス・リンス「残り数周で降った雨のせいでクレイジーな展開になってしまったね。序盤あまりフィーリングが良くなくて12番手あたりからなかなか順位を上げることができず、雨が降り出した時ジャック(ミラー)がピットインするのを見て一緒にピットインしてしまったんだ。その後ちょっと雨足が弱まったから結果的にピットインのタイミングが早すぎたんだけど、あの状況で判断することは難しかった。3コーナーはかなり濡れていたけど他はなんとかスリックタイヤでも走れる感じだったから、他のライダーのようにもっとスリックで引っ張った方が正解だっただろうね。この2戦はちょっと苦戦気味だったけど完走してポイントが獲れたし、次戦は大好きなシルバーストーンだからとても楽しみにしている。さらに気持ちを引き締めて、次戦ではきっちり結果を残せるように頑張るよ。」