2026年F1モナコGPでは、異例とも言える数のピットレーン速度違反が発生した。決勝ではジョージ・ラッセル、ルイス・ハミルトン、ピエール・ガスリー(2件)、フランコ・コラピント、オスカー・ピアストリの計6件の違反が記録され、多くのドライバーがタイムペナルティを受けた。しかもFIAの資料によれば、違反はいずれも制限速度60km/hをわずかに上回っただけだった。なぜこれほど多くのドライバーが同じ違反を犯したのだろうか。
実際には大幅な速度超過ではなかったモナコでは安全上の理由からピットレーン速度制限が通常の80km/hではなく60km/hに設定されている。決勝中に科されたペナルティを確認すると、違反はいずれも1km/h未満の超過だったとされている。そのためパドックでは「ドライバーが本当にスピードを出し過ぎていたのか」という疑問の声が上がった。実際、ルイス・ハミルトンもレース後に自身の違反について納得していない様子を見せた。「僕はスピード違反なんてしていない」「何年もこのピットレーンを走ってきた。ピットリミッターもすぐに入れている」「長年みんなが使ってきたラインを通っただけだ」「実際には制限速度を超えていなかったので驚いた」有力視される“白線ショートカット説”現在パドックで最も有力視されているのが、ピットレーン終盤のライン取りが影響したという説だ。FIAはピットレーン内に設置された計測ループ間の通過時間から平均速度を算出している。そのため、ドライバーが計測区間内で通常より短い距離を走行した場合、実際の車速は変わらなくても平均速度が高く計算される可能性がある。2026年から参戦したキャデラックF1は11番目のチームとしてピット出口側の最後尾にガレージを構えている。モナコではその周辺スペースが比較的広くなっており、ドライバーが白線の内側を大きくカットしやすい状況だったとみられている。その結果、実際にはリミッターを使用していても、計測上は速度超過と判断された可能性が指摘されている。マクラーレンもレース中に対応マクラーレンのアンドレア・ステラ代表も、チーム内で同様の見解が共有されていたことを明かした。「ショートカットし過ぎたことが原因かもしれないと考えた」「そこでオスカーには白線をカットしないよう指示した」つまりチーム側もレース中に、ライン取りがペナルティ発生の要因になっている可能性を認識していたことになる。モナコ特有のピット入口も影響か元F1戦略エンジニアのバーニー・コリンズは、モナコ特有のピット入口の構造も関係していると説明している。一般的なサーキットでは高速状態から減速しながらピットリミッターを作動させる。しかしモナコでは低速区間からピットレーンへ進入するため、ドライバーはよりタイトなラインを選びやすい。その結果、計測区間内で走行距離が短くなり、平均速度計測との組み合わせによって違反判定につながった可能性があるという。FIAから正式説明はなし現時点でFIAは今回の速度違反が相次いだ理由について公式な説明を行っていない。ただし、決勝だけで6件もの違反が発生し、さらにプラクティスでもアンドレア・キミ・アントネッリ、アレックス・アルボン、フェルナンド・アロンソらが同様の違反で処分を受けていたことを考えると、単純なドライバーのミスだけでは説明がつきにくい。そのためパドックでは、キャデラックのガレージ付近でのライン取りとFIAの平均速度計測方式が重なった結果、異例のペナルティラッシュにつながったとの見方が強まっている。現段階ではあくまで有力な仮説だが、今後FIAが何らかの説明や運用見直しを行うかにも注目が集まりそうだ。