2025年F1 マイアミGP 決勝で各ドライバーが使用可能な持ちタイヤ数と予想されるタイヤ戦略を公式タイヤサプライヤーのピレリが発表した。ピレリは、マイアミ・インターナショナル・オートドロームにC2(ハード)、C3(ミディアム)、C4(ソフト)というレンジで中間のコンパウンドをノミネートしている。決勝がドライな場合、2種類のコンパンドを使うことが義務付けられる。
「マイアミの太陽の下で輝いたのはパパイヤじゃなくオレンジだった」スプリントでの不本意な結果を吹き飛ばすように、フェルスタッペンが土曜午後に渾身のラップを叩き出し、週末2度目のポールポジション獲得者となった。わずか数百分の差でランド・ノリスを抑え込んだ。とはいえ、ノリスはそれほど落胆していなかった。というのも、ドライバーズランキング首位でありチームメイトのオスカー・ピアストリに対して予選で勝っていたからだ。両者の差はおよそコンマ1秒。だが、そのわずかな隙間に割って入ってきたのが、またしてもメルセデスのキミ・アントネッリ。今週末2度目の印象的な予選を決めてきた。グリッド全体を見渡しても、とにかく僅差の連続。決勝のマイアミGPは、まさに“何が起きてもおかしくない”状態。フリー走行では高燃料のロングランデータがほとんど得られず、スプリントはウェットコンディション。さらに今年は昨年とは異なるタイヤ構成。これだけ材料が揃えば、展開の予想が難しいのも当然だ。ただひとつ言えるのは、「戦略がすべてを決める」ということ。それだけは間違いない。■去年のマイアミはどうだったか2024年のマイアミGPでは、ランド・ノリスがF1初勝利を手にしている。ただし、勝敗を分けたのは中盤に出た劇的なセーフティカー。これがなければ、もっとスリリングな展開になっていたかもしれない。レース前の想定では、大半のドライバーがワンストップ戦略を計画していた。スタートはC3ミディアムタイヤ、中盤にC2ハードへ交換するパターン。タイヤのデグラデーション(摩耗)が非常に少なく、ピットインのタイミングにはかなり幅があった。早いドライバーは10周目から動き出し、トップ勢で最初に止まったのは17周目のセルジオ・ペレス。対してノリスは29周目まで走り続け、そのタイミングでセーフティカーが入る。これが「おいしいストップ」となって、ピアストリとフェルスタッペンの前に出て首位に立つ。トップ10のうち8人はこのミディアム→ハード戦略を採用。一方で、ルイス・ハミルトンとフェルナンド・アロンソの2人は真逆のハード→ミディアム戦略を選んだ。ハミルトンは8番手スタートから26周目にストップして6位。アロンソは22周目にピットに入り、なんと35周にわたるロングミディアムスティントで15番グリッドから9位まで上げている。興味深いのは、C4ソフトタイヤを使ったのがわずか3人だけだった点。これは今年のC4がミディアム指定であることを考えると、タイヤ特性がどれだけレース展開に影響するかを示すデータだ。なお、周冠宇がその戦略で14位に入ったのが最高位だった(ミディアム→ソフト、28周目にストップ)。また、バルテリ・ボッタスはソフトでスタートし11周目にハードへ。ただし、セーフティカー中に再度ピットに入り、戦略を2ストップに切り替えている。アレックス・アルボンは10周目に早々にピットインし、ハードで引っ張る作戦に出たが、最後の4周でやむなくソフトへもう一度ピットインしている。■今年の最速戦略は?今年、ピレリはタイヤ構成を1段階柔らかくしてきた。その一方で、各コンパウンドの耐久性も向上している。結果として、今年も有力視されるのはミディアム→ハードのワンストップだ。理想的なピットウィンドウは去年と同じく19〜25周目。このゾーンにうまく合わせることができるかどうかがカギ。■トップ10勢の代替案は?去年ハミルトンとアロンソが成功させたハード→ミディアムの逆張り戦略は、今年も有効だろう。この戦略のピットタイミングは32〜38周目あたり。序盤はやや不利だが、セーフティカーのタイミング次第では大きく得をする可能性がある。リスクとしては、スタート時のグリップ不足と、セーフティカーが早すぎるタイミングで出てしまった場合の柔軟性のなさ。下位勢のオプションは?レーシングブルズを除くすべてのチームがハードタイヤを2セット温存している。これはセーフティカーや赤旗が出た際の「保険」でもあるが、状況次第では2ストップ作戦も十分現実的。今年のC3(ハード)は“決勝用タイヤ”として非常に扱いやすい。したがって、2ストップで使われる可能性があるのは以下の2つ:■ミディアム→ハード→ハード(ピットイン:12〜18周目、34〜40周目)■ソフト→ハード→ハード(ピットイン:8〜14周目、31〜37周目)■天気がすべてを変えるかもしれない」ここが最大のワイルドカード。土曜のスプリントで起きた混乱は記憶に新しいが、同時に収穫もあった。たとえば、路面は比較的早く乾くということ。そして乾き始めると、インターミディエイトタイヤのフロント右が激しく摩耗する傾向がある。決勝のスタート時点で降水確率40%。レース中盤には60%に上昇する見込み。つまり、インターで粘るのか、あるいは再び雨が来ると信じて耐えるのか、判断が問われる。ピレリのマリオ・イゾラによると「スプリントでは、10〜12周でフロント右が限界に達し、アンダーステアが出てラップタイムが伸びなかった。これが意味するのは、乾きかけた路面で雨がまた降るかもしれない時、タイヤを保たせるには濡れている箇所を積極的に探して走る必要があるということ。そうしないとインターが持たなくなるし、もう一度ピットインを強いられる」という。混沌必至のマイアミGP。決勝の舞台は整った。勝つのは速さか、戦略か、それとも天のいたずらか。すべてはハードロック・スタジアムの午後に託された――
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