メルセデスは2026年F1第5戦カナダGPに大規模なアップデートパッケージを投入した。フロントウイングやフロア周辺の改良が注目された一方で、技術面で特に興味深かったのはリアエンドに導入された新しいディフューザーの処理だった。W17にはライバル勢では見られない独自の空力ソリューションが採用されており、2026年F1マシンの開発競争が新たな段階に入ったことを示している。
リアタイヤ周辺の空力最適化をさらに推進メルセデスはカナダGPに向けて、フロントウイング、フロア、車体中央部など複数の領域にアップデートを導入した。基本的なコンセプトは従来仕様を維持しているものの、特にリアタイヤ前方のフロア外縁部はさらに複雑な形状へと進化している。このエリアは、回転するリアタイヤが発生させる乱流の悪影響を抑えるうえで重要な領域であり、各チームの空力担当者が継続的に開発を進めている部分だ。その中でメルセデスは、ディフューザー周辺にも新たな工夫を加えた。他チームにない“ギザギザ形状”を採用2026年F1マシンでは、プレシーズンテストの頃から各チームがディフューザーの効果を高めるための開発を続けてきた。多くのチームはリアクラッシュストラクチャー周辺に延長パーツを設置し、場合によってはリアウイング支持構造まで活用しながら、レギュレーションの範囲内で最大限のダウンフォースを引き出そうとしている。そんな中、メルセデスがカナダGPで投入した仕様には新たな特徴が確認された。従来から存在していたリアクラッシュストラクチャー沿いの垂直フィンに加え、ディフューザー上部にギザギザ状のプロファイルが追加されたのである。その形状は、一部チームがヘイロー周辺の透明フェアリングに採用している鋸歯状エレメントを連想させるものとなっている。この構造はディフューザー全幅の半分以上に及んでおり、現時点で他チームのマシンには見られない独自の処理だ。“ウォーターフォール構造”にも独自の工夫メルセデスの新機軸はそれだけではない。ディフューザー両脇に配置される、いわゆる「ウォーターフォール」形状の空力パーツ周辺にも新たなガイドベーンが追加された。この小型ディフレクターは外側へ向けて配置されており、フロア下面から流れ出る空気をより正確にコントロールすることを目的としている。これまでもフェラーリを含む複数のチームが、ディフューザー外側とウォーターフォール構造の接続部分の改良に取り組んできた。特にフェラーリは下側領域で様々なテストを実施してきたことで知られている。しかしメルセデスは異なる方向性を選択した。今回のアップデートではウォーターフォール構造の最上部に小型ディフレクターを追加し、マシン後方へ流れる気流をさらに整流することを狙っている。このソリューションについても、現時点では他の2026年F1マシンでは確認されていない。メルセデスが示した新たな開発の方向性2026年F1レギュレーション下では、各チームがフロアとディフューザー周辺の開発に大きなリソースを投入している。その理由は、この領域がダウンフォース生成の中核を担う一方で、エネルギーマネジメントや車高変化の影響も受けやすく、ラップタイムに直結するためだ。カナダGPで投入されたメルセデスの新型ディフューザーは、単なる細部の変更というよりも、リアエンドの気流制御そのものに新たな発想を持ち込んだ開発と言える。今後、ライバルチームが同様のアイデアを採用するのか、それとも別の解決策を見つけるのか。2026年F1シーズンの空力開発競争を占ううえでも興味深いアップデートとなりそうだ。