メルセデスF1の元エンジニアが、カスタマーチーム向けPU(パワーユニット)の供給を巡る“政治的判断”の存在を明かした。2026年F1シーズン開幕後、マクラーレンはメルセデス製PUに関する情報共有の不足を示唆し、「同じ条件で戦っていない」と不満を漏らしていた。これに対し、トト・ヴォルフは「全チームを満足させることはできない」と説明していたが、今回の証言は、その背景にある“現実”を浮き彫りにしている。
“速すぎるPU”は弱いチームへ? 元メルセデスF1エンジニアが証言元メルセデスF1エンジニアのホセマ・ガランは、ポッドキャスト「Minimo Comun Multiplo」で、自身が担当していたPU分析業務について詳細を語った。ガランは、PUの性能や信頼性を分析する役割を担っていたと説明。その中では、わずかに性能差のあるPUをどのチームへ供給するかという判断も行われていたという。「僕はその役割が本当に好きだった。パフォーマンスだけでなく、信頼性も含めて分析する必要があったからだ」「そこで常にジレンマがあった。『これは少し性能がいい。でも別の欠陥も見つかった。これをワークスに渡すのか? それともカスタマーに渡すのか?』という感じだ」さらにガランは、最終的な判断には“政治的要素”も存在していたと明かした。「通常はカスタマー側に渡していた。選手権順位に関係していたかどうかは言わないけどね」「ただ、その意味で政治的な判断は確実にあった。『このチームは基本的に成績が悪いから、一番いいものを渡しても我々を脅かさない』という考え方だ」「もちろん差は1000分の数秒レベルだ。FIAがこれを管理することはできない。これが現実の世界なんだ」マクラーレンF1は“知識不足”を克服?2026年シーズン序盤、マクラーレンは新世代メルセデスPUへの適応に苦しみ、ワークスとの差が指摘されていた。しかし、マイアミGPでは状況が一変。マクラーレンは大幅なパフォーマンス向上を見せ、逆にメルセデス側が「マクラーレンは何を変えたのか」を分析するためデータ確認を希望したとも報じられている。報道では、マクラーレンが短期間で“7分の1秒”近い改善を果たしたとの見方もあり、メルセデスにとっては警戒材料になりつつある。もちろん、メルセデスが意図的にマクラーレンへ“劣るPU”を供給していたと断定する材料は存在しない。現時点でそのような推測を行うのは危険だ。ただ、元内部関係者による今回の証言は、F1のカスタマーPU供給が単純な“完全イコール条件”ではない可能性を改めて示唆するものとなった。2026年F1で再燃する“ワークス優位”論争2026年F1レギュレーションではPU依存度が大幅に高まっており、エネルギーマネジメントやソフトウェア制御の重要性も増している。その中で、ワークスチームとカスタマーチームの間にどれほどの“見えない差”が存在するのかは、今後さらに大きな議論になりそうだ。