メルセデスF1代表のトト・ヴォルフが、2025年シーズンにフェラーリへ移籍して以降思うような成績を残せていない元チームメイト、ルイス・ハミルトンを擁護した。ヴォルフはハミルトンのドライビング能力に疑問の余地はないと強調し、シーズン後半の巻き返しに期待を寄せている。
12年間にわたってメルセデスに在籍し、6度のタイトルをともに獲得してきたハミルトンは、今季フェラーリへと電撃移籍。しかし、マラネロでの新生活は厳しいものとなっており、第10戦終了時点で獲得ポイントは79にとどまり、ドライバーズランキングは6位。チームメイトのシャルル・ルクレールや旧ライバルのマックス・フェルスタッペンを追う展開が続いている。「ルイス・ハミルトンを決して見限るな」ヴォルフはポッドキャスト番組『Bloomberg Hot Pursuit』に出演し、ハミルトンの近況について次のように語った。「人間はそんなに簡単にドライビングスキルを失うものではない。2021年の彼は素晴らしかった。その後レギュレーションが変わって少し難しくなったが、それでも非常に高いレベルで走り続けていた」「チームを移ったからといって、急に腕が落ちるわけではない。誰でも適応には時間がかかる。クルマのキャラクターも全然違うし、エンジニアリングチームも一新されて、まずは信頼関係を築かなければならない」「それに加えて、クルマの開発にも継続的に関わって、自分のドライビングスタイルに合わせる必要がある」「イタリア人スタッフ中心のチームに、イギリス人の彼が"パラシュート降下"で加わったような形だ。それには時間がかかる」また、ヴォルフはハミルトンがシーズン後半に調子を上げる傾向があることを指摘し、「彼を早々に見限るべきではない」と警鐘を鳴らす。「これまでの傾向を見れば、ルイスはシーズン序盤に調子をつかみ、後半で一気に力を発揮してきた。だからこそ、彼を過小評価すべきではない」友情と信頼で築かれたパートナーシップハミルトンの移籍によって、F1史上最も長く成功したドライバーとチームの関係は一区切りを迎えたが、ヴォルフは二人の絆が変わっていないことを強調した。「もちろん今は異なるチーム同士で、グローブを外して戦っている。しかしトラック外では一緒に過ごすことも多いし、長年築いてきた友情は失いたくない」「F1で12年も続いたドライバーとチームの関係なんて、他のスポーツでもめったに見られない。クルマの開発においても彼の経験は計り知れない。ルイス・ハミルトンのような存在を失うのは、どんなチームにとっても痛手だ」現在のF1カレンダーには残り13戦が予定されており、ハミルトンとフェラーリが巻き返す時間はまだ残されている。ヴォルフの言葉通り、後半戦に"復活"したハミルトンがタイトル争いに食い込む可能性も、決してゼロではない。フェラーリが彼のポテンシャルを最大限に引き出せれば、物語は再び動き出す。