マクラーレンF1は、2023年F1マシン『MCL37』のエンジンを初始動させた。マクラーレン・テクノロジー・センターのレースベイには、期待に胸を膨らませる人々が集まっていた。シミュレーターセッションを終えたばかりのアンドレア・ステラ、ザク・ブラウン、オスカー・ピアストリはチームに迎えられたが、2023年型マシンの轟音とともに、全員の注意は目の前の光景に一瞬で目を奪われた。
ファイヤーアップはプレシーズンの重要な瞬間だ。ジョナサン・ブルックスの言葉を借りれば、「新車と新シーズンの誕生」である。喜び、興奮、そして安堵の表情がある。決して、毎年、一発でスイッチが入るわけではない。「その時に車に命が吹き込まれる」とF1製造、車両組立、ハイドロリック担当ディレクターのジョナサン・ブルックスは語る。「チーム内のどこに所属しているかによって異なるが、ファイヤーアップは、数ヶ月、場合によっては数年にわたる多くの人々の仕事の集大成だ」「ファクトリー全体にとっても大きな瞬間だ。非常に多くの人が多大な労力を費やしてきたからね。さっきも言ったように、この瞬間はまるでクルマの誕生のようなものであり、誰もがその場にいて、初めて火を噴く音を聞きたいと思っている」「エンジンを始動させうのは長いプロセスであり、夜遅くまで、チーム全体で多くの時間を費やさなければならない。多くのことを個別にチェックし、サインをしてからクルマに搭載する。ファイヤーアップは、すべてが正しく、あるべき姿で動作していることの確認だ」マクラーレンで24年間働いてきたジョナサン・ブルックスは、マクラーレンのファイヤーアップを何度も見てきており、今では重要な役割を担っている。「良いファイヤーアップとは、すべてが計画通りに進むことだ。すべてが正しい場所にあり、良い状態にある」とジョナサン・ブルックスは説明する。「今回のクルマづくりは、とてもスムーズに進んだ。昨年は新しいレギュレーションと新しい複雑なクルマのせいで、ピットレーンにいるすべてのチームにとってより困難な年だったが、今年のクルマの一部は既知のものだ」「今のところ、すべてが計画通りに進んでいるし、小さな問題も大きな問題にはならずに解決できている」Androidのアプリによると、初めてエンジンを始動したときの騒音レベルは83デシベルに達した。エンジンがオフになると、アンドレア・ステラとザク・ブラウンは向かい合ってチームを祝福し、拳を突き合わせた。チームと会話をしていたオスカー・ピアストリには、撮影セッションに向かう合図が来た。チームは車に戻り、ジョナサンは自分のデスクに戻る。プレシーズンシーズン前にやるべきことはまだたくさんある。「毎年、いろいろなことを学んで、次の年のプランに反映させている」とジョナサン・ブルックは語る。「毎年、シーズンの終わりには、最初の製造期間中とレースシーズンを通して取ったすべてのメモを振り返り、2024年の車両製造に向けたプロセスの改善と合理化を行う」「第1戦にマシンを送り出したら、すぐにレビューが始まる。それまでは、新しいパーツがどんどん出てきて、ローンチに向けてクルマに取り付けていく真剣勝負のプログラムだ」