レーシングブルズのリアム・ローソンは、サンパウロGPスプリントでのオリバー・ベアマン(ハースF1チーム)との接触により、5秒のタイムペナルティとF1スーパーライセンスへのペナルティポイント1点を科された。両者は1周目のターン4進入で接触。スチュワードは当初、直線でローソンを芝生に押し出したとしてベアマンにペナルティを科していたが、ターン4での衝突を再検証した結果、ローソンに主な過失があると判断した。
ターン4での接触を巡る詳細な経緯スチュワードの報告書によると、「1周目、30号車(ローソン)は左側イン側から87号車(ベアマン)の追い抜きを試みた。両車がコーナーを立ち上がる際に接触が発生した。ターン4では、30号車がわずかに右へ動き、87号車は左コーナーの自然なラインをたどる過程で30号車方向へわずかに寄った。その結果、87号車の左リアと30号車の右フロントが絡み、87号車がスピンした」と説明されている。さらに、サーキットカメラとオンボード映像の検証では、「30号車のフロントアクスルがコーナーの進入前に87号車のリアミラーと並んでいたかどうかを明確に確認できなかった」とされ、ガイドライン上で“イン側のマシンが並んでいたと認められる場合に与えられる走行スペースの権利”が成立していなかったと判断された。ローソンの主張と減刑理由ローソンは「ターン3〜4の直線でベアマンに押し出された影響で、左側タイヤが冷えて湿っていたため、ターン4ではアンダーステアを起こし、結果的に接触に至った」と説明。これを受けてスチュワードは、「コースコンディション、冷えたタイヤ、そして前軸がわずかにベアマンのミラーと並んでいた事実」を考慮し、通常10秒相当のペナルティを5秒に減じたと明記した。この裁定により、ローソンは過去12か月間で累計8点のペナルティポイントに到達。出場停止処分となる12点の閾値まで残り4点となった。レーシングブルズにとって痛手のスプリントスプリントではチームメイトのアイザック・ハジャーもノーポイントの10位に終わっており、レーシングブルズはダブル入賞を逃した。週末後半の予選では巻き返しに成功し、両者がQ3進出を果たしたが、ローソンのペナルティはランキング争いにも影響を及ぼしかねない。スチュワードの判断基準と「並び」の解釈今回の事例は、FIAの「オーバーテイク時の並び(overlap)」ガイドラインの厳格な適用を示す一件といえる。ターン4のような高速左コーナーでは、イン側のマシンが相手のミラーより前に位置していなければ、十分なスペースを主張できないとされる。ローソンは“冷えたタイヤによるアンダーステア”を主張しつつも、FIAが求める明確な並びを証明できなかったことが、過失認定の決め手となった。ベアマン側に初期のプッシュオフ(押し出し)があった点は考慮されたが、減刑止まりで免除には至らなかった。この件は、若手ドライバーにとって「初動での位置取り」と「再現性のある映像証拠」の重要性を再確認させる象徴的なペナルティとも言える。