アイザック・ハジャーは、レッドブル・レーシング昇格に伴う“代償”が何かをすでに理解している。オーストリアの名門で迎える初のシーズンを前に、21歳のフランス人は、新たな立場に付随するメディア露出の増加について「正直、ただただ鬱陶しい」と率直に認めた。F1での初年度はとりわけ説得力のある内容だった。レーシングブルズでのシーズンを終え、ドライバーズランキングのトップ10に肉薄。
1度の表彰台と、さらに10回のポイントフィニッシュを積み上げ、シーズンを通して最も印象的なルーキーとして存在感を放った。その結果、レッドブル陣営内での昇格論は自然な流れとして加速していった。その昇格は最終戦アブダビを前に正式発表された。レッドブル・レーシングは、角田裕毅に代わり、マックス・フェルスタッペンのチームメイトとしてハジャーを起用すると公表した。レッドブル・レーシングのドライバーであることは、必然的により高い期待と注目を意味する。とりわけ、この“難しいシート”で結果を出せずに苦しんだ前任者たちの歴史を踏まえれば、注視の度合いは一層強まる。そうした状況を前に、増える名声と関心に耐えられるかと問われたハジャーは、遠回しな表現を一切使わなかった。「いいや」とハジャーは言い切った。「正直、ただ鬱陶しいだけだ」どう対処するつもりかと促されると、今度はユーモアを交えてこう続けた。「消えるためのプランはあるよ。マスクを着けるとか、分からないけど……」ルーキーイヤーを終え、ハジャーはレーシングブルズという章に区切りをつける。同チームは、和やかな雰囲気と結束を重んじる文化で知られ、とりわけSNS上ではその空気感が色濃く表れていた。リアム・ローソンとともに、ハジャーはしばしば遊び心のあるコミュニケーションにも参加してきた。ユーモア動画やミームの再現、意図的に肩の力を抜いたやり取りなど、極めて競争的な世界に“余白”を持ち込む試みだった。そうした雰囲気の一部を恋しく思う気持ちは認めつつも、ハジャーの優先順位ははっきりしている。「来年は、ずっとシリアスになる。レーシングブルズは家族的なチームだ。でも同時に、僕はふざけるためにここにいるわけじゃない」「楽しむのは家に帰って友達とやる。サーキットでは仕事をするためにいる。それはまったく苦じゃない」