ホンダは、2026年F1シーズンから導入される新たなパワーユニット規則について、エンジンメーカーが直面する最大の課題を明らかにした。大幅な電動化とコスト制限という二重の変化の中で、効率性とエネルギーマネジメントが決定的な要素になるという。2026年からF1は新レギュレーションに移行し、パワーユニットの構成も大きく変わる。排気熱から電力を回収するMGU-Hが廃止され、電動モーターと内燃機関の出力比率はほぼ50対50となる。
MGU-H廃止と電動化比率の拡大「新しいエンジンにはMGU-Hがありません。排気ガスの熱エネルギーを電気に変換できなくなるため、ターボラグが発生し、それに対応する必要があります」と、ホンダ・レーシング・コーポレーション代表の渡辺康治は説明する。「もうひとつの大きな課題は、電動モーターの出力がほぼ3倍になる一方で、バッテリー容量はほとんど変わらない点です。鍵になるのは、エネルギーマネジメントをいかに効率的に行うかということです。これが新レギュレーションにおける最も難しい技術課題だと考えています」効率性が勝敗を分ける時代「効率性が新しいF1時代の決定的な要素になると思います」と渡辺は語る。「ホンダは先進的なバッテリー技術に誇りを持っています。世界最高水準だと考えていますので、その強みを最大限に生かしながら、エネルギーマネジメント性能をさらに高めていくことが重要です。また、2026年からはパワーユニットに対する予算上限が年間1億3000万ドルに設定され、設計、製造、供給にかかるすべてのコストが含まれます。大きな技術変革の時期に、エンジンサプライヤーの運営方法そのものが問われることになります」最大級の技術的チャレンジ一部のドライバーは、すでに2026年仕様のマシンをシミュレーターで体験しており、チーム側も詳細なシミュレーションを行っている。その結果、パワーの使い方に関する懸念も浮かび上がっている。例えばモンツァの長いストレートでは、1コーナーのブレーキングポイントよりもかなり手前でバッテリーの電力が尽き、最高速が低下する可能性があるという。「パワーユニットが電動50%、内燃機関50%になることで、電気エネルギーをどのように生成し、蓄え、どこでどれだけ使うかという効率を高める必要があります」と渡辺は述べる。「現在のパワーユニットでも、コーナーごとに精密なエネルギーマネジメントが求められていますが、2026年以降はその重要性がさらに増します。エネルギーマネジメントはコーナーごとに異なり、ひとつのサーキットだけでも何千通りもの組み合わせがあります。HRCでは、2万以上のデータポイントを処理し、最適なエネルギー配分を導き出す内部ソフトウェアを開発しています」「こうした作業は表に出にくいですが、テスト機会が限られている現代のF1では、デジタルシミュレーションが極めて重要です。特に2026年は電力消費が大幅に増え、エネルギー回生と供給の管理がより複雑になります。プロジェクト全体の中でも、最大級の技術的挑戦だと考えています」アストンマーティンとの集中体制ホンダは2026年からアストンマーティンにのみパワーユニットを供給する。これにより、これまで4台分得られていたフィードバックは2台分に減るが、将来的な拡大の可能性は残している。「現時点では、他チームへの供給は考えていません。我々はアストンマーティンとともに勝つことに集中したいと考えています」と渡辺は語る。「将来的に、複数チームに供給することで追加のフィードバックが得られるなどの利点があるのであれば、その可能性は検討すると思います。ただし、それは近い将来の話ではありません」1964年からF1に参戦してきたホンダは、その長い経験を背景に、新時代への挑戦に自信を示している。アストンマーティンと一体となった体制で、2026年F1シーズンにおける競争力確保を目指していく構えだ。東京で行われる発表イベントホンダは、2026年F1パワーユニットを東京で開催される特別イベントで発表することを明らかにしている。発表は2026年1月20日13時(現地時間)に予定されており、イベントには本田技研工業の代表執行役社長である三部敏宏、F1のステファノ・ドメニカリ、そしてアストンマーティンのエグゼクティブチェアマンであるローレンス・ストロールが登壇する。
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