ホンダF1のテクニカルディレクターを務める田辺豊治が、F1サウジアラビアGPの決勝を振り返った。予選で力強さを見せ好位置からのスタートとなったホンダF1勢4台。マックス・フェルスタッペンはスタート後も3番手をキープし、セルジオ・ペレスも同じく5番手を守った。
しかし、スクーデリア・アルファタウリ・ホンダの2台はピエール・ガスリーが6番手から8番手に、角田裕毅はエステバン・オコン(アルピーヌ)との軽い接触により12番手までポジションを落としてしまう。10周目でセーフティカーが導入されピットレーンがオープンとなると、レッドブル・ホンダはペレスがピットインし、フェルスタッペンは2台のメルセデスとのリードを築くためにコース上にとどまった。この先を読んだ判断が功を奏し、直後にクラッシュバリアの修復のためにレースは赤旗中断となり、フェルスタッペンはリスタートに備えてハードタイヤに交換することが可能となった。レース再開ではフェルスタッペンはトップ、続いてガスリーが7番手、ペレスが8番手、角田が11番手からスタートとなり4台全てがハードタイヤを装着。レース最後まで走る戦略を立てた。リスタート後にフェルスタッペンはトップを守ったが、ペレスが3コーナーで左側をシャルル・ルクレール(フェラーリ)、右側をガスリーに挟まれる形となり、ルクレールに接触。クラッシュバリアに接触し残念ながらリタイアとなってしまった。このクラッシュにより再度赤旗が提示。そしてレーススチュワードからフェルスタッペンに対して、最初のスタート時に2コーナーでコーナーカットしたことを理由に、2ポジションダウンという裁定が下される。その後、17周目からリスタートとなった際には、フェルスタッペンはミディアムタイヤを履き、3番グリッドに位置することになった。リスタートではガスリーは変わらずハードタイヤで6番手から、角田はフェルスタッペンと同じくミディアムタイヤに変更して12番手からリスタートした。フェルスタッペンはリスタート後にミディアムタイヤを上手く使い1コーナーでトップに浮上し、ガスリーは6番手をキープ。角田は抜群のリスタートを見せ9番手までポジションを上げた。しかし角田はその後、セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)との接触によりフロントウイングを破損し、更に5秒のタイムペナルティを受け14位でレースを終えている。レースはタイトルを争うフェルスタッペンとハミルトン(メルセデス)が繰り広げる壮絶なバトルから目が離せない展開となった。1コーナーで同時に2台がワイドに出てしまう場面が見られたが、その際にアドバンテージを築いたという理由で、フェルスタッペンはハミルトンにトップを譲らなければいけないというオーダーが課せられてしまう。ポジションを明け渡す際、メルセデスが追い越すことを許可されていたにも関わらず、背後からハミルトンに接触される。更に、フェルスタッペンはショートカットしたことを理由に5秒のタイムペナルティが課された。その後、再度ハミルトンが前に出ると、ミディアムタイヤで2番手を走行したフェルスタッペンは、そのままポジションを守り2位でフィニッシュ。タイトルを争うハミルトン(メルセデス)と同ポイントで来週開催となる最終戦のアブダビに向かうことになった。ガスリーは接触などなくクリーンにレースを終え、終始いいペースを見せた。終盤ではリカルド(マクラーレン)に迫る勢いをみせたが、6位でフィニッシュし8ポイントを獲得。これで同選手のレースキャリアでの通算獲得ポイントが100ポイントを超えた。ドライバー、コンストラクター共にチャンピオンシップ争いはヤス・マリーナ・サーキットでの最終戦まで持ち越されることになった。ドライバーチャンピオンシップは同一ポイントながら優勝回数に勝るフェルスタッペンが優位に立っている一方で、コンストラクターチャンピオンシップはレッドブル・ホンダがメルセデスに対して28ポイントのビハインドになっている。「F1初開催のサウジアラビアGPは、2回の赤旗を含む波乱の展開になりました。レッドブル・レーシング・ホンダのフェルスタッペン選手は、その波乱の中でのピット戦略も功を奏して一時はトップを走行しましたが最終的に2位に終わりました。チームメイトのペレス選手は、赤旗中断後のリスタート時の混乱の中での接触によりリタイアとなってしまいました」「スクーデリア・アルファタウリ・ホンダのガスリー選手は難しいレースを上手く走り切り6位入賞となり、いいパフォーマンスを見せてくれたと思います。角田選手は接触によりポジションを落として14位という残念なレース結果にはなりましたが、初めてのサーキットでいいパフォーマンスを発揮できたポジティブな週末になりました」「ドライバーズチャンピオンシップについてはフェルスタッペン選手がハミルトン選手と同一ポイント、コンストラクターズチャンピオンシップは今日の結果からメルセデスに差を広げられてしまいました。そしていよいよ、来週の最終戦で両チャンピオンシップが決まります。ホンダF1の最後の挑戦となる今シーズンの最終戦、第22戦アブダビGPに向けてチーム一丸となり全力を注いて臨みます」