ホンダF1のテクニカルディレクターを務める田辺豊治が、最後のシーズンに挑むホンダF1、“新骨格”と称されるF1パワーユニットについて語った。ホンダは、昨年10月、今季限りでのF1参戦終了を発表。最後のシーズンに臨むホンダのF1パワーユニット(PU)は「RA621H」。昨年型から構造を一新し、“新骨格”と紹介されているPUはどのような開発が進められてきたのか、どんなものなのか。レース現場でホンダF1を束ねる田辺豊治が語った。
「開発の責任者である浅木さん(泰昭、F1プロジェクトLPL)から『新しい骨格で』との話があり、導入を決断しました。PU単体で見ると変化の度合いはつかみにくいかもしれませんが、従来のものを搭載したマシンと21年のものを並べて見ると、車体の後部が明らかに違います。小さく、コンパクトになっていて、車体のパッケージングにも寄与できていると思います。この新骨格は、Sakuraとミルトンキーンズにいる開発部隊が最終年にかける情熱を表すものですし、ホンダF1の意地とも言えるものです」2021年に対する、ホンダF1メンバーの熱い思いを代表して語った田辺豊治。常に冷静沈着な印象ですが、エンジニアとしての姿勢は、ホンダ入社当初から一貫していると語る。「ホンダに入って、最初に量産車のエンジン開発を担当したとき、まず先輩から言われたことは『エンジンはウソをつかないぞ』ということでした。量産車もF1も、構成部品の根幹は同じですし、燃料を入れて燃焼させて出力に変えるということも一緒です。それはすべてデータに現れるので、きちんと解析して、いいものを作るために活かす、そしておかしなところは改善する、それを徹底していくのみです」「開発期間の非常に短いF1でも、そのサイクルをしっかりとかつ早く回していくことが重要です。かなりの高速で走るマシンですから、わずかなトラブルがドライバーを危険にさらすことになってしまいます。そういった不具合が絶対にマシンの上で起こらないということも思って取り組んでいます」「先輩方が取り組まれたこのプロジェクトを受け継ぎ、自分たちの技術を信じてPUを開発してきて、2019年、2020年と勝利も挙げられるようになってきました。この2021年がプロジェクトの最終年となるわけですので、関わる一人ひとりが悔いのない形で、最後の年をやり切った、と思えるシーズンにしたいと思います」「悔いなく戦いきるためにどうするかということを考えたときに、昨年は、データ上でトップに対して及んでいないのは明らかでしたから、2021年、ライバルと同等、そしてその上に行くためには、今回導入した新骨格が重要だと思っています。これでマシンのトータルパフォーマンスを上げる。そのための準備をしっかりとした上で2021年に臨む、それが我々の決意です」.