ホンダのF1エンジンは、2019年のF1世界選手権の開幕戦となったF1オーストラリアGPの決勝レースにおいて全測定ポイントで最高スピードを記録した。今年からトロロッソに加え、レッドブル・レーシングにもF1エンジンの供給を拡大したホンダは、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが3位表彰台を獲得し、ホンダに11年ぶりの表彰台をもたらした。
それだけでなく、F1オーストラリアGPの決勝においてスピードトラップ、スタート/フィニッシュライン、両方の中間計測地点で最高スピードを記録している。それらの数値は、額面上、レッドブル・レーシングにとってホンダとの新しいパートナーシップが有望な結果であることを意味している。しかし、レース中はDRSの使用、エンジンモード、他のマシンからのスリップストリームを使えたかどうかなど、様々な要因に影響を受けるため、スピードトラップだけの情報から導き出せる結論は制限される。だが、予選でもホンダは有望なスピードを記録しており、2018年から大きな進歩を果たしたことが示されている。F1オーストラリアGPの予選の最高スピードは、メルセデスのF1エンジンを搭載するセルジオ・ペレスが記録した322.5km/hだった。しかし、ホンダ勢のトップだったアレクサンダー・アルボン(トロロッソ・ホンダ)も322.3km/hとわずか0.2km/h差につけている。ホンダF1は、スピードトラップの数値から結論を導き出すことには慎重だが、最下位よりもトップに近いことに越したことはないと語る。「コンディションに大きく影響されます。トップスピードのポジションは我々にとってあまり重要ではありません。ですが、最下位よりはいいです!」とホンダF1のテクニカルディレクターを務める田辺豊治は語っている。だが、批判家たちは、レッドブル・ホンダの予選での最高速度が317.8km/h(マックス・フェルスタッペン/12位)、ピエール・ガスリー(316.1km/h/16位)だったことを指摘し、ホンダのF1エンジンによる違いはないと主張している。予選でのスピードトラップの数値がルノーよりもホンダが優れていることを強調していないことは事実だ。ルノーのF1エンジンを搭載するマクラーレンは、カルロス・サインツ(320.8km/h/5位)、ランド・ノリス(319.7km/h)といずれもレッドブル・ホンダのドライバーを上回っている。しかし、同時にそれはレッドブル・レーシングがルノーからホンダへの移行に苦労してはおらず、2018年のレベルを維持するという最初の目標を達成していることも意味する。トロロッソとレッドブル・レーシングのパフォーマンスの違いは、レッドブル・レーシングがエンジンのパワー不足を補うためのロードラッグのセッアップをもはや追求していないことを表している。実際、レッドブル・レーシングは予選での最高速度が遅くても、レース状況では戦える速さを見せており、マックス・フェルスタッペンはスピード差が物を言うターン3でフェラーリのセバスチャン・ベッテルをオーバーテイクしている。マックス・フェルスタッペンは、フェラーリとメルセデスと比較してもストレートで“戦える”力があったと語っている。それはトーを得ることでレッドブルが作り出しているドラッグが打ち消されていることを意味している。また、これは2019年の空力レギュレーション変更によってリアウイングとドラッグが大きくなり、DRSの効果がより強力になったことも影響している。レッドブルのモータースポーツアドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、昨年までは非力なルノーのF1エンジンのためにダウンフォースを減らしてトップスピードを高めるマシン設計を強いられてきたが、ホンダのF1エンジンのパワーのおかげでダウンフォースを重視したマシン開発を進めることができると語る。「今後、我々はできる限り早くにシャシーに取り組んでいかなければならない。我々にはもっと多くのダインフォースが必要だ。近年、我々は可能な限りダウンフォースを少なくして、ドラックが大きすぎないクルマを製造してきたからだ。だが、もうそこは問題ではない」