ホンダのF1撤退から1ヶ月が経過した。撤退発表と同時に、チーム買収に興味を持つ複数の候補者からコンタクトがあったとされているが、未だ正式な発表はなされていない。最近では、イギリス政府がホンダF1買収について調査に乗り出すとの報道がなされた。この報道の裏には、ニック・フライ自身が、マネジメント・バイアウトを検討しており、東京からの指示に基づき入札を調査する立場にあるニック・フライが、自身を有利な立場に置いているとの懸念がある。
プロドライブのデビット・リチャーズが売却から手を引いたことにより、事実上ニック・フライのマネジメント・バイアウトの対抗馬は、ギリシアの海運王アキレアス・カラキスとなった。今回の報道では、ダヴェントリー選出の下院議員ティム・ボズウェルが、将来を心配するホンダF1チームのスタッフの要請を受けDTIに連絡したとされている。F1内部関係者は「ファクトリー内の怒りとフラストレーションは信じられないほどだ。我々はニックが一人二役を演じているのが正しいことなのかどうか疑問に思っている。DTIは必ずホンダが最良で最も競争力のある買い手を見つけられるようにしてくれるだろう」とのコメントを寄せている。ニック・フライは、イギリス政府による調査の報道を“妨害行為”であると否定したが、自身に不利な報道がなされたときに、すぐさま否定コメントを発表するのはニック・フライのいつものやり方だ。事実、ボズウェルは「今週初めに、明らかに商業的関心を持つある人物から連絡を受けた」と認めている。そして、この異議申し立ては、アキレアス・カラキスの代理人が行ったと思われる。アキレアス・カラキスは、チームを存続させるための向こう5年間の提案をホンダF1チームに提出し、すでに彼の資産のあるモナコの国王にも話をつけているという。しかし、その提案がニック・フライのところで握りつぶされており、本田技研のモータースポーツ担当役員である大島裕志まで届いていないと考えているらしく、日本の自動車業界関係者にも確認をいれているとの情報がある。エンジンに関しては、当初考えられたフェラーリが供給をしないことを表明したが、メルセデス・ベンツが供給に関して前向きな姿勢を見せている。メルセデス・ベンツは2009年からフォース・インディアにもエンジンを供給するが、生産数に問題はないという。これはエンジンの使用数を制限するレギュレーション変更により、逆に在庫が発生するためだ。メルセデス・ベンツのノルベルト・ハウグは、ホンダF1チームへのエンジン契約に期日を設けていないと語っているが、ロス・ブロウンは「違うエンジンを搭載するためにマシンを改造するには少なくとも6週間は必要だ」と語っており、チームが2009年開幕戦のグリッドに並ぶには、1月中がリミットとなる。仮に1月中に買い手とエンジン契約が決まっても、プレシーズンのテストは不可能。2009年からはシーズン中のテストが禁止となるため、いくら名将ロス・ブラウンが率いる設計チームといえども、競争力のあるマシンを仕上げるのは困難となるだろう。チーム買収に関する最終決定権は、日本の本田技研が握っているとされる。この9年間、レースを戦ったというより、政治に振り回された感のある本田技研。最終的にどのような決断を下すのか注目したい。(F1-Gate.com)