メルセデスのジョージ・ラッセルは、2025年末で終了するF1のグラウンドエフェクト時代について、「まったく恋しくならない」と断言した。2022年の規則導入から続いた“過酷なマシン”に対し、身体的負担の大きさを強調。特に序盤の深刻なポーポイズ現象については、「健康安全上、デザイナーをリグに乗せるのすら危険だった」と衝撃的な裏話を明かした。2026年に導入される新レギュレーションでは、アンダーフロア依存のダウンフォースから大きく脱却するため、ラッセルはこの移行を心から歓迎している。
「本当に残酷なクルマだった」ラッセルの本音カタールGP前に、現在のグラウンドエフェクト規定に別れを告げる準備はできているかと問われたラッセルは、遠慮なくこう答えた。「もちろんだ。本音を言えばね。正直、ものすごく残酷なクルマなんだ。僕たちには、サスペンションの動きをシャシー側から再現してラップを再生するリグがあるんだけど、僕とルイスは、バクーの再現走行をチーフデザイナーの誰かに体験させようとしたんだ。でも安全担当者から『危険すぎる』と言われて止められた。それでどれほど酷かったか分かると思う」“揺さぶられ続ける90分” ドライバーの肉体は限界ラッセルは、現在のマシンがドライバーに与えてきた負荷をあらためて説明する。「1時間半のあいだ、全身が揺さぶられ続ける。背中も身体も、目もだ。初めてラスベガスに行ったときなんて、クルマが激しく路面に当たって、ブレーキボードが見えなかったことを覚えている」「時速240マイルで走っていて、ブレーキングの看板が見えないんだ。他のドライバーにも聞いたけど、半分くらいは同じ状況だった」「だから、この規定から離れられるのは本当にうれしい」2026年は“アンダーフロア依存”からの脱却へ2026年マシンは床下のダウンフォース依存を下げ、2021年以前に近い空力哲学へと移行する。これにより、ポーポイズの根本的な改善が期待され、ドライバーはより“扱いやすい”コクピット環境を得られる見込みだ。また、パワーユニットも新世代ハイブリッドへ移行し、エンジンと電動のバランスが大きく変わることで、マシンのフィーリングそのものが刷新される。ラッセルにとって、これは単なるレギュレーション変更ではない。3年間にわたり肉体を痛めつけてきた“拷問装置のような”マシンから、ついに解放される瞬間でもある。グラウンドエフェクト時代の終わりが意味するもの2022年に“接近戦促進”の目的で導入されたグラウンドエフェクトだが、現実にはドライバーたちの首・背中・視界に甚大な負荷を与え、安全上の議論を引き起こした。ラッセルはその象徴的な存在であり、“時代の終焉を喜ぶ”姿は、この3年間がどれほど厳しいものであったかを物語っている。2026年に向けて、彼はようやく“揺さぶられないF1”を迎える準備が整ったようだ。