F1が分裂の危機に直面している。8つのF1チーム(フェラーリ、マクラーレン、ルノー、BMW、トヨタ、ブラウン、レッドブル、トロ・ロッソ)からなる組織FOTAは、FIAが提示する2010年のF1レギュレーションを受け入れられないとして、F1を離れて新たに独自のシリーズを設立することを発表。事実中のF1離脱を宣言した。そこでなぜこのような展開になったのか、これまでの経緯をまとめてみることにする。
F1分裂騒動F1分裂騒動の発端は2009年3月17日、マックス・モズレーが2010年から3,000万ポンドの予算キャップを導入し、予算キャップを選択したチームには技術的な自由を与えるとの提案を発表したことに始まる。その提案に対し、各F1チームは予算制限とF1に2つのレギュレーションが混在することに反発。予算制限の増額やテクニカルレギュレーションの見直しなどを訴えてきた。しかし、FIAは2009年4月29日の世界モータースポーツ評議会の場で、4,000万ポンドの予算キャップを含めた2010年 F1レギュレーションを正式発表する。予算制限額は引き上げられたものの、この発表はF1チームの同意を得ていない一方的なものであり、フェラーリ、ルノー、トヨタ、レッドブルなどのF1チームがF1撤退をほのめかすようになる。5月15日にはヒースロー空港でFIAとFOTAによる予算制限に関する会議が行われたが決裂。フェラーリは、2010年のレギュレーションの差し止めを求めて告訴する。しかし5月19日、フランスの裁判所はフェラーリが提訴した4,000万ポンドの任意の予算キャップ案の差し止め請求には正当な理由がないと棄却した。また提訴により、フェラーリが2006年のF1分裂騒動の際にFIAと多額の収入、安定した規約、大幅な変化に関する特別な拒否権を含めた極秘協定を結んでいたことが明るみになる。そして、2010年のエントリー申請の最終期限である5月29日が迫ってくる。FIAとFOTAはモナコGPの場でも会議を重ね、2010年を1億ユーロ、2011年に4,500万ユーロとする段階的な予算キャップ案などが浮上するも同意には至らず。そんな中、ウィリアムズはFOTAの同盟を破り、無条件で2010年のエントリーを提出。フォース・インディアもウィリアムズに続いてエントリーを提出し、FOTAはウィリアムズとフォース・インディアを除名処分とする。5月29日のエントリー締め切り日。残りのFOTAチームは、6月12日のFIAによるエントリーリスト公表までに新しいコンコルド協定の締結、予算制限を含めたレギュレーション改訂などを条件とした暫定エントリーを提出。それに対しFIAは6月12日、条件を6月19日までに取り下げることを条件としてFOTAチームをすべて含めた暫定的な2010年のエントリーリストを発表。このエントリーは、フェラーリとレッドブル、トロ・ロッソはFIAとの契約があるため無条件エントリーとして扱われており、5チーム(マクラーレン、ルノー、トヨタ、BMWザウバー、ブラウンGP)に条件取り下げを求める形となった。その後、2つのレギュレーションの廃止などを含め、FIAとFOTAは歩み寄りをみせるがこれも決裂。そして、取り下げ期限前日の6月18日、FOTAは独自のシリーズを立ち上げるとの声明を発表。事実上のF1の離脱を宣言した。FIAは、FOTA特にフェラーリに対して契約違反を主張しており、法廷措置を行うことを宣言。その状況がおさまるまで2010年のF1エントリーを提出することはないだろうとしている。仮にF1が分裂した場合、F1ドライバーの大部分はFOTAシリーズ参戦の意向を示している。その場合、今のF1がほぼそのまま新FOTAシリーズへ移行することになる。F1は自動車メーカーが全て撤退するため、コスワースエンジンによるワンメイクレースとなる。また、F1が被る損失は22億ドルにのぼるとされている。どちらのシリーズが魅力的であるかは明言しないが、F1が大きな危機に瀕していることは確かだ。(F1-Gate.com)