FIA(国際自動車連盟)は、2024年度のF1チームおよびパワーユニット(PU)メーカーに対するコストキャップ遵守審査の結果を公表した。その中で、アストンマーティンが唯一の違反チームであることが判明し、他の9チームおよび5つのPUメーカー(メルセデス、フェラーリ、ホンダ、レッドブル・フォード、アウディ)はいずれも適正と認定された。
報告書の公表が例年より遅れたため、パドック内では「より重大な違反が発覚したのでは」との憶測が飛び交っていた。これまでの年次報告は2022年(2021年シーズン分)が10月初旬、2023年と2024年は9月に発表されており、今年の発表は異例の遅さだった。審査は7カ月に及ぶ複雑な手続きFIAは声明の中で、今回の審査プロセスは「非常に時間を要した」と説明している。その理由として、財務規則の複雑さに加え、「チームおよびPUメーカーが実施した開発活動における技術的側面とコスト処理を評価する必要があった」と述べた。審査は7カ月にわたり実施され、慎重かつ多角的な検証が行われたという。アストンマーティンの違反は「ごく軽微」FIAによると、アストンマーティンの違反は「非常に軽微なもの」だった。公表された「ABA(Accepted Breach Agreement/違反承認合意書)」の要約によれば、アストンマーティンは2025年3月31日の提出期限前に「署名のない版」の報告書を提出していたことが問題とされた。独立監査法人による署名を取得できたのは最も早くても4月15日であり、期限後となっていた。しかし、この遅延には「チームの管理を超えた例外的かつ予測不可能な事情」が存在していたとされ、その具体的な内容は非公表となっている。また、アストンマーティンがこの違反によっていかなる競技的・経済的利益も得ていないことが確認されたため、FIAコストキャップ管理部門(CCA)は制裁を科さず、ABA手続き費用の負担のみとする決定を下した。FIAの透明性と信頼回復の試金石今回の発表は、F1の財務規律に対するFIAの透明性を改めて問うものとなった。2021年のレッドブルのオーバースペンド違反以降、コストキャップ制度は厳格さと公平性の両立を目指して改良が進められている。一方で、今回のような手続き上の軽微な違反が「誤解を招かぬ形で」迅速に処理された点は、制度運用の成熟を示す兆候ともいえる。アストンマーティンにとっては痛手にはならなかったが、すべてのチームが提出時期や形式にも細心の注意を払う必要があることが、改めて明確になったと言える。
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