元F1ドライバーのジャン=ルイ・シュレッサーは、FIAが2031年以降の新パワーユニットとして検討を進めるV8エンジン構想について、「夢ではあるが実現するとは思えない」と懐疑的な見方を示した。また、2026年から導入される電動化を強めた新レギュレーションについても厳しく批判し、「F1が環境に優しいという考えはナンセンスだ」と切り捨てた。
1983年と1988年にF1へ参戦した77歳のシュレッサーは、スペイン紙『Mundo Deportivo』のインタビューで、現在のF1が電動技術へ傾倒しすぎていると指摘。若手育成にかかる莫大なコストについても問題視し、マックス・フェルスタッペンの主張に理解を示している。「エンジンの40%以上が電動なのは問題」2026年からF1は、内燃機関と電動出力の比率をほぼ半々に近づけた新世代パワーユニットへ移行する。しかしシュレッサーは、その方向性そのものに強い違和感を抱いている。「電子制御がレースを支配しているのは残念だ」「心配なのは、エンジンの40%以上を電気系統が占めるべきではないということだ」さらに、F1が持続可能性をアピールしていることにも疑問を呈した。「F1が環境に優しいと言うのはナンセンスだ」「環境問題を気にするなら、レースそのものをやめればいい。半分電気で走るクルマだとか、そんなものは間違った方向へ進んでいる」2031年V8構想には「夢だが実現しない」FIAのモハメド・ビン・スライエム会長は、2031年以降に向けて、より軽量でシンプルかつ低コストなパワーユニットへの移行を提唱しており、V8エンジンに小型ハイブリッドシステムを組み合わせる案が有力候補の一つとなっている。しかしシュレッサーは、大手メーカーがその方針転換を受け入れる可能性は低いとみている。「私はあまり信じていない」「多くのメーカーは取締役会の支持を得るために、自社のクルマが環境に優しいというイメージを売りにしている。例えばアウディがF1に参戦した理由もそこにある」「BYDのようなメーカーを呼び込もうとするかもしれないが、V8は夢だし、V10ならなおさら素晴らしい。でも実現するとは思えない」1988年モンツァでセナと接触した真相も回顧シュレッサーはF1でわずか2戦の出場に終わったが、1988年イタリアGPで周回遅れとなりながらアイルトン・セナと接触し、マクラーレンのシーズン全勝を阻止した出来事で広く知られている。当時の場面について、シュレッサーは避けようがなかった事故だったと振り返った。「セナは僕のギアボックスのすぐ後ろにいて、選択肢はなかった」「もしアクセルを緩めていたら追突されていたかもしれない。だから単なる不運だった」また、そのレースへの参戦は急きょ決まったものだったという。「フランク・ウィリアムズから電話があり、『金曜日にイタリアへ来て運転できるか』と聞かれた」「『このシートを望んでいるドライバーは10人いる。でもパトリック・ヘッドが君を希望している。来なくても構わない』と言われた」シュレッサーはフランク・ウィリアムズについて、「いい人だったが、ぶっきらぼうだった」と振り返っている。なお、1983年のフランスGPではRAMからF1デビューを果たしたが、そのマシン性能については笑いながらこう語った。「あのクルマの最高速は、僕のツーリングカーと同じくらいだった」若手育成費用は「異常」 フェルスタッペンにも賛同シュレッサーは、F1へ到達するまでに必要な資金が年々膨れ上がっている現状についても厳しく批判した。「今の若手カテゴリーへ進むための費用は異常だ」「公平ではない。F1に到達するまでの費用が高すぎるというマックス・フェルスタッペンの意見には全面的に賛成だ」自身の息子ルイ・シュレッサーもレーシングドライバーとして活動しているが、現状には満足していないという。「もっと勝たなければならない」「レースで十分に勝てていない。それに今のフォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパは参戦費用が高すぎる」シュレッサーは、2031年以降のV8エンジン構想には魅力を感じながらも、自動車メーカーの戦略や環境イメージを重視する流れを踏まえれば実現は難しいと予想している。一方で、電動化が進みすぎた現在のF1や若手育成にかかるコストの高騰には強い危機感を示し、現代のF1が抱える構造的な課題に警鐘を鳴らした。