F1を揺るがしている2026年レギュレーションを巡る論争が、4月20日の重要な判断に向けて一段と緊迫している。ドライバー側の不満に加え、安全面での懸念も強まりつつあり、これまで変更に慎重だった有力チームにも対応が迫られる構図になってきた。4月9日にはFIA、各チーム、パワーユニットメーカーを交えた最初のオンライン会議が行われる予定だが、これはあくまで準備段階とみられている。実際の結論は月後半に持ち越される見通しで、焦点は4月20日の会合に集まっている。
争点はエネルギーマネジメントと出力制御今回の議論の中心にあるのは、エネルギーマネジメントとパワーデリバリーのあり方だ。特に鈴鹿で発生したオリバー・ベアマンの高速クラッシュ以降、現行の考え方にはスポーティング面だけでなく、安全面からも疑問の声が強まっている。ドライバー側は、出力の変化が急激に起こる状況そのものにリスクがあるとみており、制御方法の見直しを求めている。単なる性能論争ではなく、マシン挙動の予測可能性やドライバーの安全確保に直結する問題として受け止められている。アレックス・ブルツ「ソフトウェアで制御すべき」GPDA会長のアレックス・ブルツは、現状はすでに介入が必要な段階にあるとの見方を示した。「安全の観点から言えば、トップスピード域で出力が急激に変化することは、単純に禁止しなければならない」とブルツは語った。「そのためには、全チームで共通のソフトウェアが必要になる。危険なのは、速度が滑らかに増えていくのではなく、突然変化してしまうことだ」「こういうところで介入して、『これは起きてはいけない。ソフトウェアで制御する必要がある』と言わなければならない」この発言は、レギュレーションの細部を各陣営の競争領域として残すのではなく、安全に関わる部分については統一的な管理を導入すべきだという立場を明確に示したものだ。ドライバーの不満は急速に拡大舞台裏では、ドライバーたちの不満も急速に高まっている。ブルツによれば、ドライバーのWhatsAppグループはこの問題を巡る議論で“火がついた”状態にあり、ほぼ全員が現行の方向性に強い不満を抱いているという。これは一部のドライバーだけが異議を唱えている状況ではない。実際には、グリッド全体で広く共有された問題意識となっており、FIA側も無視できない段階に入っていることをうかがわせる。フェラーリF1は小さな変更にも警戒一方で、レギュレーション変更に対する抵抗も依然として大きい。特に上位勢は、わずかな調整であっても勢力図に影響を及ぼす可能性があるため、簡単には譲歩しない構えを見せている。フェラーリF1のフレデリック・バスールは、調整の必要性そのものには理解を示しながらも、競争上の不利益を受け入れるつもりはないと明言した。「レギュレーションに調整が必要だということは、私は完全に理解している。これはショーにとっても、誰にとってもプラスになる」とバスールは語った。「だが同時に、たとえ小さな変更であっても、ある者には有利に働き、別の者には不利に跳ね返る。すべてのマシンは異なる特性を持っているから、レギュレーションの変更は、どれほど小さくても、誰かにコンマ数秒、あるいは1000分の数秒の利益を与える可能性がある」「我々はサーキットで1000分の1秒を争っている。そうした状況で、何かを犠牲にするつもりはない」この発言は、F1の政治的な難しさを端的に示している。安全やショー改善の必要性が共有されていても、最終的には各チームが自らの競争力を守ろうとするため、合意形成は容易ではない。議論はリフト・アンド・コーストの抑制にも及ぶ今後の協議では、エネルギー展開ルールの簡素化が主なテーマになるとみられている。具体的には、回生可能な出力の引き上げや、極端なリフト・アンド・コーストを減らす方向での調整が論点になる可能性がある。現在の仕組みが、レースの自然な攻防を損ない、なおかつドライバーに不自然な運転を強いているとの見方は強い。そこに安全面の問題が重なったことで、単なる性能最適化の話では済まされなくなっている。最終的な変更にはFIA世界モータースポーツ評議会の承認が必要となるが、関係者の間で合意が形成されれば、この手続き自体は形式的なものになるとみられている。つまり、実質的な勝負は4月20日の段階で決まる可能性が高い。今回の論争は、2026年F1の競技性と安全性の両方を左右する重要な分岐点になりそうだ。ドライバーの不満、安全上の警鐘、そして上位チームの抵抗が交錯するなかで、FIAがどこまで踏み込めるのかに注目が集まる。