FIA(国際自動車連盟)は、近年多くの批判を浴びてきたカーボン剥き出し主体のF1リバリー問題に対処するため、2026年に向けて新たなレギュレーションを導入する。金曜日のF1コミッションの会合では、側面および上面から見た車体表面積のうち、最低55%を塗装あるいはステッカーで覆わなければならないという義務が正式に盛り込まれた。FIAは、この措置の目的を「マシン間の視覚的な差別化を高めること」と説明している。
近年のF1では軽量化を優先し、塗装を極力省いたカーボン剥き出しのマシンが増加していた。華やかだった過去のグリッドと比べ、近年のマシンは色彩が乏しく、見分けがつきにくいという批判がファンやメディアから数多く寄せられてきた。2026年から最低重量が引き下げられることもあり、各チームはさらなる軽量化を狙ってカーボン剥き出しを拡大しようとする可能性があったが、今回の規制はその流れに歯止めをかけることになる。会合では、2014年に導入されたドライバーの固定ゼッケン制度についても議論が行われ、キャリア途中でナンバー変更を認める提案が合意されたと報告された。ただし、どのような条件で変更が可能になるのかといった具体的な内容は示されていない。空力開発制限(ATR)についても協議された。ATRは前年のコンストラクターズ順位に基づいて風洞やCFDの使用量を制限する制度で、年の途中でリセットが実施される。FIAは、計算能力とシミュレーション技術の進歩に合わせた制度改訂を進めており、同時にコストを考慮した形に調整する必要があるとの見解を示した。グランプリにおける2ストップ義務化の可能性も話し合われたが、今回は合意には至らず、2026年に議論を継続することになった。ドライバー冷却システムについては改善案が提起され、こちらも今後さらに検討される予定である。一方で、公開された会合サマリーには、ブラジルGPでレッドブルがマックス・フェルスタッペンのエンジンを交換した件に関してマクラーレンが求めている明確化については一切触れられていない。マクラーレンは、信頼性ではなくパフォーマンスを目的としたエンジン交換がコストキャップの対象に含まれるのかどうか、FIAに判断を求めている。2026年に向けて“カーボン剥き出し規制”がもたらす変化今回の規制は、近年急速に進んでいたF1マシンの“黒一色化”を抑えるための明確な方針転換となる。各チームは軽量化のため塗装を削る動機が強かったが、視覚的な魅力を損なうとの批判が増えていた。最低55%の塗装義務は、ファンからの要望に応え、マシンの識別性を高めるための強制力を持つ施策といえる。ドライバー番号変更の合意が示すF1の新しい柔軟性ゼッケン変更を認める案が合意されたことは、F1のマーケティング戦略やドライバーのブランド構築に新たな選択肢を提供する可能性がある。ドライバーがキャリアの節目で番号を変えることによりイメージ刷新につながるだけでなく、タイトル獲得時の象徴的な番号の扱いにも自由度が広がる。2ストップ義務化とレース運営の今後2ストップ義務化はレースの戦略幅を制限する可能性があるため慎重な扱いとなっており、すぐに導入される見込みは薄い。それでもレースの単調化を避けるための議論は継続される見通しで、タイヤ運用のあり方を巡る議論は今後も注目を集めるだろう。マクラーレンのPU疑義が取り上げられなかった背景フェルスタッペンのエンジン交換が「性能向上のためではないか」というマクラーレンの疑念は、今回の会合では正式な議題として扱われなかった。これは調査が別枠で進められている可能性や、政治的判断によって公表を避けた可能性が考えられる。この問題はタイトル争いの行方にも関わるため、今後も議論が続くことが予想される。
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