F1は、2021年に導入される新しいレギュレーションでタイヤサイズを13インチから18インチに拡大する。FIA(国際自動車連盟)は、2020年以降のF1単独タイヤサプライヤーの入札に先駆けて、2021年のタイヤレギュレーションの変更案を公開。扁平率の低い18インチのロープロタイヤに移行するとともに、フロントタイヤの幅は305mmから270mmに縮小、リアタイヤの幅は405mmを維持することが明らかになった。
ピレリは数年前から18インチへの変更を推進しており、2014年にはシルバーストンでシャルル・ピックがロータスのF1マシンでコンセプトタイヤで走行を実施。2015年にはマーティン・ブランドルがGP2のテストカーで18インチタイヤを試している。また、2021年から2023年まではタイヤブランケットが廃止されることも明らかになった。タイヤブランケットの使用禁止はコスト削減の一環として以前から議論されていた。ドライバーがタイヤパフォーマンスを最大限に引き出すためにタイヤの熱入れがより難しくなり、タイヤメーカーにとって対応は大きな技術的なチャレンジとなる。今回公開されたタイヤレギュレーションでは、新しいタイヤは「ピット出発時の冷えた状態で安全なパフォーマンスをもたらすこと」と記されている。さらに、2月末から3月初旬にかけて伝統的にバルセロナで実施されているF1冬季テストでは低温対応のタイヤが供給されることになる。新レギュレーションは、オーバーテイクの増加が主な目的のひとつとして挙げられており、2021年のタイヤレギュレーションは“ショーの改善”が最優先事項として記載されている。F1は、次世代のF1タイヤが、レースでドライバーがより長く最大限にプッシュできることを求めつつも、レース週末にスパイスを加えるべく戦略的なバリエーションを生み出すことも要求している。タイヤの耐久性とパフォーマンスピークのウインドウを決定づけるタイヤデグラデーションについては「レース戦略に影響を及ぼし、タイヤが極度の摩耗を生じる地点に至らないことを確実にすることが好まれる」と記されている。また、各週末に供給される3種類のコンパウンドに期待されるデグラデーションレベルと各コンパウンド間のパフォーマンス差についても記されている。ミディアムタイヤはハードよりも1秒速く、ソフトはミディアムよりも1.2秒速くなければならない。その一方で、ソフトのパフォーマンスはレース距離10%で2秒、ミディアムはレース距離18%で2秒、ハードはレース距離22%で2秒、それぞれ劣化させなければならないとしている。FIAは、タイヤの耐久性の違いによって、レース戦略に1ストップ、2ストップ、3ストップが混在することを望んでおり、最も柔らかいコンパウンドを使うドライバーは1ストップ戦略を実行できないようにすることを望んでいる。「アグレッシブなドライビングや接戦において、タイヤに優しいドライビングや前方がクリアになった状況における走行よりもタイヤデグラデーションが高くなることを期待する。アグレッシブなドライビングや接近戦が終了し、より安全な状態になればタイヤは急速にラップあたりのデグラデーションレベルが低い状態に戻される」また、パフォーマンスに関しても新しい18インチタイヤが、現行タイヤと同程度のパフォーマンスを発揮することを要求している。2020年からのF1タイヤ供給に関心のあるタイヤメーカーは、8月末までFIAに申請しなければならない。2011年にブリヂストンからタイヤサプライヤーを引き継ぎ、現在F1にタイヤを独占供給するピレリは、今後も引き続きF1に供給していきたいとの意向を示している。だが、18インチタイヤの採用は2021年からのため、F1へのタイヤ供給を希望するメーカーは、新レギュレーションに移行する前に2020年のレギュレーションに沿った13インチのタイヤを1年間製造しなければならない。