1992年のF1ワールドチャンピオンであるナイジェル・マンセルが、2026年F1レギュレーションによって生まれている新たなレース展開に強い懸念を示した。バッテリー回生と電力配分が追い抜きに大きく影響する現状について、マンセルは「完全に偽物」のように見えるオーバーテイクがあると指摘した。2026年F1では、新型V6ハイブリッド・パワーユニットと電力使用の比重増加により、リフト・アンド・コーストやエネルギー回生がレース展開の中心的要素となっている。
これに対してはマックス・フェルスタッペンやフェルナンド・アロンソら現役ドライバーからも批判が出ており、ファンの反応も分かれている。マンセル「一部のオーバーテイクは完全に偽物」現役時代にアグレッシブなレーススタイルで知られたマンセルは、英オートスポーツ誌に対し、現在のF1で見られるオーバーテイクの一部に違和感を覚えていると語った。「これを言ったら撃たれるかもしれないが、残念ながら一部のオーバーテイクは完全に偽物だ」「素晴らしく見えるオーバーテイクもある。だが次のコーナーを出ると、片方のクルマが一気に吹き上がって抜き返し、もう一方のクルマは後ろに下がっていく。コンピューターが正しくないタイミングで追加パワーを与えているからだ。ドライバーがそれをコントロールしているわけではない。もし自分で選べるなら、そこで使ってはいなかったはずだ」マンセルは、ランド・ノリスが高速コーナー手前で意図せずオーバーテイクする形になった場面にも触れ、現在のF1ではドライバーの意思と実際のオーバーテイクが一致しないケースがあると指摘した。「ランドだったと思うが、『シケインに向かう高速コーナーで彼を抜きたかったわけではない。でも選択肢がなかった』と言っていた。コーナーを出たところで相手がリフトし、その後ストレートでまた一気に抜き返していく」「非常に慎重にならなければならない。私のことなどどうでもいい。だが世界中のファンのことを考えれば、多くのファンがかなり不満を持っているのを私は知っている。そして公平に言えば、私はそのファンたちに同意する」1980年代の燃費管理とは「まったく違う」F1のステファノ・ドメニカリCEOは最近、現在のリフト・アンド・コーストについて、1980年代にも同様の燃費管理があったと説明していた。しかし、1980年にF1デビューし、1990年代前半まで戦ったマンセルは、その比較に明確に異を唱えた。「いや、我々はそんなことはしていなかった。リフトしてコーストするというのは、誰かのスリップストリームに入っていて、オーバーテイクしないと判断したときにスロットルを少し抜くようなものだった。それは燃料を節約するための繊細な操作であり、賢いやり方だった」「コンピューターがクルマの走行を引き受け、バッテリーのために回生させるというのは、まったく別のものだ。我々は最速コーナーに入るところで50〜70km/hも減速するようなことはしていなかった。だから、それを比較するのはかなり無理がある」日本GPのベアマン事故は「運が良かっただけ」2026年F1日本GPでは、オリバー・ベアマンが低速走行していたフランコ・コラピントのアルピーヌに接近し、接触を避けた末に大クラッシュを喫した。ベアマンに怪我はなかったが、速度差の大きさは新レギュレーションの危険性を浮き彫りにした。マンセルは、この事故についても強い危機感を示した。「質問されたわけではないが、私はドライバーたちに大いに同情している。現時点では非常に危険だと思う。我々はすでに日本でひどい事故をひとつ免れた。あれは運が良かっただけだ。彼は本当にひどい怪我をしていた可能性があった」F1はマイアミGPを前に、予選での極端なリフト・アンド・コーストを抑えるための調整を導入している。しかし、エネルギー回生とソフトウェア制御による電力配分は2026年F1の根幹であり、マンセルの発言は、現在の議論が単なる懐古論ではなく、安全性と競技性の両面に関わる問題であることを示している。