2026年F1シーズンの開幕を目前に控え、アストンマーティンとホンダのパートナーシップは想定以上に厳しい状況に直面している。マシンAMR26の開発は大きな壁に突き当たり、チーム内部の組織構造や開発体制にも課題が浮き彫りになっている。スペイン『Motor.es』の分析では、その原因は単なるパワーユニット問題にとどまらず、シミュレーションソフトの問題や組織的な意思決定の停滞など、複数の要因が複雑に絡み合っていると指摘されている。
メルセデス製ソフトの“欠落”が開発を混乱させたAMR26の開発過程で大きな問題となったのは、シミュレーションソフトウェアだった。アストンマーティンはこの重要なソフトをメルセデスから購入していたが、契約上の知的財産の制約により、ソフトを動かすための「基準モデル」は含まれていなかったという。つまりチームはプログラムそのものは持っていたが、それを機能させるための標準データがなかった。本来、この種のシミュレーションソフトはマシンの変更を仮想環境で検証するために不可欠なツールだ。例えば空力ダウンフォースを増やした場合、サスペンションにどれほどの負荷がかかるか、タイヤコンパウンドを変更するとどの程度グリップが変わるかといった挙動を高精度で予測できる。しかし基準モデルがない状態では、結果の信頼性が大きく損なわれる。チーム代表エイドリアン・ニューウェイは、この状況を受けて重大な決断を下したとされる。メルセデスのシステムを完全に捨て、新たなソフトウェアを開発するというものだ。だが、このようなツールをゼロから構築するには膨大な時間がかかる。ニューウェイがプレシーズンテストで語った「痛みを伴う決断」という言葉は、このソフトウェア問題を指していた可能性がある。ニューウェイ体制の影 中間管理層の不在アストンマーティン内部では、もう一つの問題が指摘されている。それはリーダーシップ構造だ。エイドリアン・ニューウェイはF1史上でも屈指の天才エンジニアとして知られるが、チーム内部では彼の強烈な個性が逆に組織の機能を鈍らせているとの声もあるという。ニューウェイは自分のビジョンに強い確信を持ち、反対意見を排除する傾向があるとされる。その結果、チーム内では意思決定を担う中間管理層が十分に育っておらず、現場が指示待ち状態に陥っているとの指摘もある。最近成功を収めたチームであるマクラーレン、メルセデス、レッドブルでは、問題を迅速に特定し決断する体制が確立されている。しかしアストンマーティンでは、そのスピード感が欠けているという。内部関係者の証言によれば、重要な領域で判断が凍結しているような状態が見られるという。「何をすべきか分かっていても、それを実行する決定が下されない。誰もミスをしたくないからだ。これは小さなチームによく見られる行動だ」ホンダとの関係に残る2015年の記憶ホンダとの関係については、外部から見えるほど悪化しているわけではないとされる。しかし、ホンダにとって2015年の記憶は今でも消えていない。あの年、日本GPでフェルナンド・アロンソが無線で放った「GP2エンジン」という言葉は、ホンダの技術陣に大きな衝撃を与えた。当時ピットの奥にいたホンダの幹部たちは、その無線を聞くと静かにヘッドセットを外し、無言でその場を離れたという。この出来事は、2015年から2017年にかけて続いたマクラーレン・ホンダの破局的な関係の象徴として語り継がれている。双方に“逃げ道”はない現在のアストンマーティンとホンダの関係には、もう一つ大きな特徴がある。それは双方に代替案がないことだ。アストンマーティンはホンダのパワーユニットに依存しており、ホンダもまた他にワークスパートナーを持っていない。つまり両者は、うまくいかなくても協力を続けるしかない。短期的には問題の修正に数か月、競争力のあるパッケージを完成させるには数年かかる可能性もある。もしプレシーズンテストで見られた問題がレース距離でも続くなら、AMR26は90分近いグランプリを走り切ることさえ難しい可能性がある。チーム内部では、少なくとも開幕戦オーストラリアGPで2台が完走することが一つの成功と見なされているという。そして、チーム内ではある共通した認識が広がっている。少なくとも短期的には、状況はさらに悪化する可能性があるということだ。
全文を読む