アストンマーティンF1に加入したエイドリアン・ニューウェイは、現代F1における技術競争の核心である空力、そしてその中核となる風洞開発に早くから深く関わっている。チームの新風洞は現在「コアウィーブ」と名付けられており、AMR26の開発がこの施設で本格的に始まったのは4月に入ってからだったが、ニューウェイはこのツールに対する強い手応えを隠していない。
長年にわたりパドック屈指の設備で仕事をしてきた経験を踏まえたうえで、ニューウェイはアストンマーティンの風洞を明確に最上位クラスに位置づけている。「コアウィーブの風洞は、まさに最先端の設備だ。F1用途としては、おそらく世界最高の風洞だと言っていいと思う。非常に高度で、我々の仕様に完全に合わせて設計されており、あらゆるレベルでコアウィーブの専門知識が組み込まれている。我々にとって真のゲームチェンジャーになるはずだ」とニューウェイは語った。その熱意は、単なる新設備への期待にとどまらない。ニューウェイにとって、この投資はF1におけるパフォーマンスの本質そのものに直結している。「空力は、F1のパフォーマンスを分ける最大の要素だ。この分野における我々の主要な研究ツールが風洞であり、それは絶対に不可欠な存在だ。そして今、ようやくその成果を得始めている」風洞にコアウィーブの名称が付けられているが、その関与は単なるネーミングライツやスポンサーシップの枠を大きく超えている。ニューウェイは、計算技術や解析技術が風洞の運用そのものに深く組み込まれている点を強調する。「彼らの貢献の一部は、風洞そのものの運用に関わる部分だ。もう一つは計測技術、例えばPIV、粒子画像流速測定だ。これは空気中に粒子を注入し、レーザーを使って流れの特性を測定することで、空気の流れを可視化する手法だ」極めて精密な手法である一方で、膨大な計算資源を必要とする。「この手法には非常に複雑なポストプロセス解析が必要になる。コアウィーブの計算能力と最先端のAIソフトウェアが風洞に直接統合されていることで、こうした流れを解析し、操作し、CFDのような他のツールと照合する能力が大きく向上している」AIは目立たずとも、すでに不可欠な存在人工知能があらゆる技術分野で話題となるなか、ニューウェイはF1におけるAIの位置づけについて冷静な見方を示す。「機械学習というものは昔から存在していた。それが単に、流行語として『AI』に置き換わっただけだ。今では誰もがAIという言葉を知っているが、実際に多くの人が日常的に使っているAIは、インターネット検索やパターン認識が中心だ」チャットGPTの使用について冗談交じりに問われると、ニューウェイは笑顔を見せつつも、アストンマーティンの方針を明確にした。「我々が使っている、いわゆる機械学習やAIは、もっと特化した用途のためのものだ。使い方は非常に限定的で、一般にインターネット由来のものを使うことはほとんどない。要求される内容があまりにも専門的だからだ」「ただし、比較的単純なタスクや、シミュレーションやゲーム理論を用いたレース戦略の分野では、パターン認識が役立つケースもある」より高度なAI活用については、競争上の優位性を意識し、あえて踏み込まなかった。「さらに進んだ応用も存在するが……それについては、今のところ触れないでおきたい」ニューウェイは、計算能力とデータ処理、そしてAIの進化の速さについても言及する。「計算能力、データ処理、そして人工知能の世界では、すべてが非常に速いペースで進化している。今日の最新技術は、12か月後にはほぼ時代遅れになっているだろう」「それは我々にとって非常にエキサイティングなことだ。だが同時に、パートナーと連携し、このスピードについていかなければならない。そこに生まれるチャンスは計り知れないほど大きい」そのためには、常に姿勢を改め続ける必要があるとニューウェイは強調する。「利用可能な技術に対して、常に心を開き続ける必要がある。毎日というわけではないが、少なくとも半年ごとには、新しい可能性を最大限に活かすために考え方を更新しなければならない」この柔軟な姿勢こそが、アストンマーティンの今季を貫く指針となる可能性が高い。そして、その象徴がAMR26だ。「その通りだ。メルボルンで走るAMR26は、バルセロナのシェイクダウンで人々が見たマシンとは大きく異なるだろう。そして、アブダビでシーズンを終えるときのAMR26も、開幕時のものとはまったく別物になっているはずだ」「心をオープンにしておくことが、何よりも重要だ」
全文を読む