アストンマーティンF1チームは、2026年の新しいF1技術規則とパワーユニット時代を見据え、設計部門の再編を実施したことが明らかになった。『Crash.net』と『The Race』によると、この動きは2026年に向けた体制強化の一環として進められており、少なくとも7名の主要スタッフがチームを離脱。なかには空力ディレクターのエリック・ブランダンや、元チーフデザイナーの芳賀昭雄の名も含まれているという。
一部のメンバーはアストンマーティン・グループ内の別部門(先進技術など)での新たな役職に就く可能性があり、完全にF1業務から離れる形になる見込みだ。チームの広報担当者は「内部の人事に関してはコメントしませんし、現時点で発表することはありません」と述べ、公式な発表は行っていない。主要メンバーの離脱と体制の見直しブランダンは2022年にメルセデスから副テクニカルディレクターとしてアストンマーティンへ加入し、今季からは空力ディレクターを務めていた人物。今回の再編は、CEO兼チーム代表のアンディ・コーウェルの指揮のもとで進められており、アドリアン・ニューウェイがマネージング・テクニカル・パートナーとして設計方針の中核を担っている。アストンマーティンは近年の積極的な人材採用でスタッフ数が急増した一方、F1のコストキャップ制度下ではリソース配分の最適化が必須となっている。チームは「世界タイトルを争う体制」を維持しつつも、限られた予算内で最大の成果を上げるため、構造的な合理化を進めている。コーウェルはこれまでに「各部門は成長してきたが、チーム全体として一体感を持って成長してきたかどうかは疑問だ」と指摘しており、ニューウェイが加わったことで“技術の方向性を一本化する”動きが加速している。ニューウェイが導く設計思想の転換ニューウェイは今年3月にチームへ加入して以来、アストンマーティンの設計体制を精査し、「どの領域を強化すべきか」「どの部分に重複があるか」を明確にした。その“ギャップ分析”によって、空力やシミュレーション、車体設計などの優先順位が再定義され、今後はチーム内のサイロ化(縦割り構造)を解消する方針が打ち出されている。今年初めには新チーフエアロダイナミシストのジョアッキーノ・ヴィーノを起用し、ニューウェイの元同僚であるジャイルズ・ウッドもシミュレーション&ビークルモデリングディレクターとして招聘。これにより、開発の“思想”そのものが変わりつつある。2026年 ホンダとのワークス体制で迎える新時代アストンマーティンは2026年からホンダのワークスパートナーとして新型パワーユニットを搭載し、完全な「ファクトリーチーム」として新時代を迎える。シルバーストンを拠点に、エンジンと車体を統合的に設計する体制が整いつつあり、フェルナンド・アロンソとランス・ストロールはいずれも2026年末までの契約を保持している。技術陣の刷新と同時にドライバー体制の安定化も図られ、コーウェルとニューウェイの指導のもと、チームはホンダとのシナジーを最大化する「統合開発フェーズ」に移行している。現状と今後の展望2025年シーズンのアストンマーティンはコンストラクターズランキング7位につけ、6位のレーシングブルズをわずか3ポイント差で追う位置にある。成績面では苦戦が続くものの、チームは2026年のレギュレーション転換を“リセットの機会”と捉え、組織改革と設計哲学の再構築を急いでいる。ニューウェイ×コーウェル体制が示す“再出発”の意思今回の再編は単なるリストラではなく、「設計思想そのものの再構築」を目的とした戦略的動きだ。アドリアン・ニューウェイの加入は、空力・車体パッケージングの両面で革命的な転換点となる可能性が高く、アンディ・コーウェルの経営的手腕によって、ホンダとのワークス連携を最大限に活かした“システムとしての最適化”が進んでいる。この再構築が成功すれば、アストンマーティンは2026年以降、フェラーリ、マクラーレン、メルセデス、そしてレッドブルと肩を並べる本格的なタイトルコンテンダーへと飛躍するかもしれない。
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