F1シンガポールGPのレースの流れを変えたのは、レッドブル・ホンダのピットストップのための準備だった。レース序盤は、ポールポジションからスタートしたシャルル・ルクレールがコントロール。ソフトスタートの上位勢はタイヤを労わり、ミディアムスタートの第2グループに対してピットウインドウを確保できず、我慢比べが続いていた。
その流れを断ち切ったのが、レッドブル・ホンダだ。4番手を走行していたマックス・フェルスタッペンが前のフェラーリ勢とルイス・ハミルトンを攻略できないと見るや、19周目にフェルスタッペンをピットに呼び入れるために準備を始める。この動きに気づいたのはフェラーリだった。トップを走行していたシャルル・ルクレールをピットに入れることはできなかったが、その4秒後方を走っていたセバスチャン・ベッテルをぎりぎりでピットに入れることに成功。ベッテルは素晴らしいアウトラップを走り、翌周にピットインしたシャルル・ルクレールをアンダーカットすることに成功する。マックス・フェルスタッペンは「タイヤに苦労していたので、チームにピットインさせてくれと伝えた。フェラーリはそれを聞いたに違いない」と語った。フェラーリのF1チーム代表を務めるマッティア・ビノットも「フェルスタッペンがピットストップする準備ができていた。我々はそれを知っていた」と語る。「そして、セバスチャンのポジションを守るための最善の方法は彼をピットインさせて、少なくとも次の周でピットストップクルーをシャルルのピットストップのためにフリーにすることだった」セバスチャン・ベッテルも「とてもギリギリの呼び出しだった」と振り返る。「第2スティントでタイヤが最後まで持つかどうかわからなかったし、少し早いと思った」マッティア・ビノットは、セバスチャン・ベッテルを早めにピットインさせた意図はルイス・ハミルトンを抜くことが目標であり、アンダーカットの効果が“予想よりも強力だった”と認める。「3.9秒差だった。我々たちはそれほど大きな数字を期待していなかった」とマッティア・ビノットは説明する。「実際、セバスチャンをピットストップさせた際、1周後にピットインするシャルルはセバスチャンの先にとどまると思っていた。セバスチャンがいい走りをして、3.9秒をアンダーカットした。それが事実だ」しかし、このフェラーリの判断によってセバスチャン・ベッテルは優勝。レースを優位に進めていたはずのシャルル・ルクレールは2位でフィニッシュ。そして、ベッテルと同じタイミングでピットストップを行ったマックス・フェルスタッペンは3位でフィニッシュしている。もし、レッドブル・ホンダがフェラーリに悟られないようにピットストップの準備をしていれば、マックス・フェルスタッペンが表彰台の頂点に立っていたかもしれない。関連:【動画】 2019年 F1シンガポールGP 決勝 ハイライト