佐藤琢磨が、インディカー第16戦・17戦とダブルヘッダーで開催されたデトロイトのレース週末を振り返った。デトロイトのベルアイルで行われたインディカー・シリーズのダブルヘッダーレースで、佐藤琢磨は抜群に速かった。しかし、運の悪さでも人並みを外れていた。どちらのレースでも好成績を収めるチャンスがあったが、どちらのレースでも勝機は佐藤琢磨の指の間をすり抜けてしまった。
レース1ではレース序盤でギアボックス・トラブルが発生し、レース2ではインディカー・シリーズでキャリア5回目のポールポジションを獲得しながら、佐藤琢磨にはまったく非のないふたつの事故に巻き込まれてしまった。インディ500が終わった直後、チームはカナダ国境にほど近い島のなかに設けられた市街地コースに向かった。ここで、AJフォイト・レーシングのダラーラ・ホンダに乗る佐藤琢磨は滑り出しからまずまずの速さを示し、最初のプラクティスではトップ10に入ってみせた。「とても忙しいスケジュールでした。ダブルヘッダーレースはいつも忙しいものですが、予選前には45分間のプラクティスが2度あるだけでした。ここで上手くいけば2レース続けていい結果が残せるでしょうし、そうでなければ2レースを立て続けに失うことになります! 僕たちは比較的いいスタートを切りました。バランスが特別よかったわけではありませんが、少なくともトップ10に入ることはできました」それでも残念なことに、佐藤琢磨は予選のセグメント2に進出できなかった。極めてコンペティティブな予選グループ内で8番手に終わったからだ。このため佐藤琢磨は15番グリッドからスタートすることが決まった。「プラクティスの結果から考えれば、もう少しいい成績が手に入ったはずです。けれども、スケジュールに余裕がなければ、いくら何かを学び取ってもそれをテストで反映させる機会はなく、確実にパフォーマンスに繋げることはとても難しいのです。予選は朝の8時30分に始まるというタフなもので、気温が低いためにグリップは高く、空気の密度も高い状態でしたが、僕たちはグリップ不足に悩まされました。あと100分の数秒速ければセグメント2に進出できたのに、それができませんでした」土曜日のスタートでは、柔らかめのレッドタイアを履くウィル・パワーとシモン・パジェノーが強引に割り込んできたため、佐藤琢磨は18番手に後退する。しかし、その後でパジェノーとパワーは接触、パジェノーはリタイアに追い込まれ、イエローコーションとなった。このとき佐藤琢磨は、その後のピットストップの展開によりこのレースで優勝することになるパワーを追い越していた。「すべて満足のいく状況でしたが、数周するとギアボックスが問題を起こすようになりました。3速から4速にシフトアップできず、4速を飛び越えて5速に入ってしまうトラブルでした。しかも症状は安定せず、次第に深刻な状況に陥っていきました。このためピットに戻るしかありませんでしたが、ここでメカニックがギアボックスに小さな問題を見つけます。結果的にコースには復帰できましたが、数周のラップダウンになっていたので、残る周回はテストとして利用することにしました」けれども、どんな災いにもいい部分はあるものだ。なぜなら、このときの努力が実を結び、チームは日曜日の予選でポールポジションを勝ち取るマシンを作り上げることができたからだ。「僕たちはいろいろなことを学びました。ただし、タイアの空気圧を変えたりとか、ほんの小さなことです。けれども、これがとても役に立ちました。僕たちにとっては必要なことだったし、ポジティブな影響を及ぼすことになったのです」トラブルが起きたとき、佐藤琢磨はパワーに先行していた。あのままいけば、佐藤琢磨は優勝できたのだろうか?「そうは思いません。デトロイトの路面はレッドタイアとの相性が非常に悪いようです。最初の数周は高いグリップ力を発揮しますが、その後グレイニングが起き、パフォーマンスは急激に低下します。このため、レッドタイアでの走行は最小限に留める必要があります。僕はブラックタイアでスタートしましたが、当然、途中でレッドに交換しなければいけません。いっぽうのウィルは、このときすでにレッドを使い終えていたのです。しかも、デトロイトの特徴的な路面にあったタイア空気圧にあわせることができなかったため、僕たちは苦しむことになります。おかげでドライブしにくい状況でしたが、それでもコースに戻って何かを学び取ることが重要でした」結果は18位だったが、全体で8番目に速いファステストラップを記録したことは何らかの可能性を示していた。実際、日曜日朝の予選で佐藤琢磨は大きな飛躍を遂げることになる。「土曜日の夜、エンジニアたちとディスカッションしました。その後、僕は真夜中に目が覚めます。そこで僕はセットアップをどう変更して欲しいかについて、エンジニアにメールで知らせました。翌朝にもミーティングはありますが、それからではメカニックたちがジオメトリーを変更する時間はありません。朝、目覚めると、エンジニアから『そうしよう!』という返事がきていました。これで予選が本当に楽しみになりました」今回は、3段階で行われる通常の予選は実施されず、ふたつの予選グループに分かれて1度だけセッションが行われることになった。佐藤琢磨はふたつめのグループから出走した。「最初のグループでジェイムズ・ヒンチクリフがものすごいラップタイムを記録しました。1分16秒で走れるドライバーがいるなんて、想像もできませんでした。なにしろ、僕が土曜日にマークしたタイムは1分18秒3でしたから! けれども、自分がアウトラップを走ってみて、路面のグリップレベルがどれくらい上がっているかに気づき、驚きました。ラバーがしっかり乗っているうえに気温が低かったので、コンディションとしては理想的だったのです」「僕自身がアタックするのを楽しみにしていましたが、僕の直前でライアン・ハンター-レイがウォールと接触してセッションは赤旗中断となってしまいます。僕のマシンはまだ完全にウォームアップが終わっておらず、クルマの挙動も十分に把握できていませんでした。レッドタイアでアタックする前に、何周か走ってブレーキやギアボックス・オイルなどの温度を上げて、準備万端にしておきたかったのです。けれども、セッションは残り数分しかありませんでした。最初のアタックでのタイムは1分17秒でしたが、このとき、僕はこう思いました。『マシンの状況はいいし、グリップレベルは高...
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