佐藤琢磨が、2014年のインディ500を振り返った。2014年インディ500が残り32ラップとなったターン4でスコット・ディクソンがウォールに接触したとき、このレースが残念な結果に終わったドライバーはディクソンひとりだけでは済まなかった。クラッシュしたマシンの破片が、その数台後方を走行していた佐藤琢磨が駆るマシンに突き刺さってしまう。
さらにアクシデントが発生して残り21周で再スタートが切られたとき、佐藤琢磨は5番手につけており、フィニッシュまで力強くレースを戦うことが期待されていた。ところが、マシンに突き刺さった破片がブレーキのような役割を果たしたことでライバルたちに抜かれ、きわめて残念な19位でレースを終えることになったのだ。もっとも、19位という順位は、佐藤琢磨がもともとスタートしたポジションとそう変わらない。予選でスピードが伸び悩んだ佐藤琢磨は、33台が3列に並んでスタートを切るインディ500の伝統的なスターティンググリッドにおいて、8列目中央のグリッドに並んでいた。「昨年のレースで到達した位置から継続する形で今年のテストプログラムを始めることになりました」 インディアナポリスでのプラクティスが始まった当初、佐藤琢磨はそう語っていた。「そして開発する必要のある領域について取り組みました。プラクティスは7日間、クォリファイは2日間ありましたが、そのうちの数日は雨が降ったので、自分たちが思ったとおりの距離を走れたわけではありません」予選が行われる週末を迎えると、ポールポジション獲得を賭けて9台だけが出走できる“シュートアウト”に佐藤琢磨が進出するのは困難に思われてきた。「クルマは徐々によくなっていきましたが、それでも予選に向けて十分なスピードが手に入ったとは思えませんでした。ファスト・フライデイでは、スピードの伸びがいまひとつで、バランスにも満足できませんでした。しかし全体のレベルは高く、230mphを越えるドライバーが多くいたことを驚異的に思いました。」ホンダ勢で予選最高位に入ったのはジェイムズ・ヒンチクリフで、実際、彼は230.839mph(約369km/h)をマークしていた。いっぽう、佐藤琢磨のベストは229.201(約367km/h)で、ほんのわずかな差しかなかったことになるが、これこそ、今年のインディ500の予選がいかに熾烈な争いだったかを示しているといえる。「ホンダとHPDはツインターボ・エンジンの開発を見事にやり遂げたと思います。だから、自分もこのレベルで戦えなかったことはとても残念です。土曜日は気温も低くコンディションが良かったので、もう1度アタックすることを希望していましたが、セッションは雨のため1時間半にわたって中断されました。この結果、僕たちは記録を更新することができませんでした」「日曜日も難しい状況で、アタックは1度しかできません。この日はずっと温かくなりましたが、思うようにスピードを乗せることができませんでした。僕にとってのファステストラップでは、ターン3でウォールぎりぎりのところを走りました。1インチ(約2.54cm)もなかったくらいです! それでも僕はスロットルを緩めませんでした。僕たちのマシンはスタビリティが不足していたので、ラインはどうしてもアウト側にふくらんでしまいます。結果は23位。自分たちの期待とは違っていましたが、決勝に向けては、この結果自体は構いませんでした」「月曜日はフルタンクでのテストを行いました。予選後のプラクティスは今年はじめて行われた試みで、レース時の走行をシミュレーションするつもりでした。そこでトラフィックのなかを走ろうとしましたが、あわせてマシンのバランス取りもしていました。このときも思うような結果が得られなかったうえ、小さなトラブルで走行時間が失われてしまいました」「金曜日に行われたカーブデイでは1時間走行できましたが、引き続きバランスに関しては満足できませんでした。トラフィック内でのスタビリティが低いうえにアンダーステアも解消できていませんでした。このアンダーステアの問題を解決しようとすると、今度はスロットルを踏んだときにリアが不安定になってしまうのです」けれども、フォイト・チームの奮闘の成果もあり、“本番”である第98回インディ500までにマシンの状態は大幅に改善されることとなった。「チームは素晴らしい仕事をしてくれました。ついにトラフィックのなかでもマシンがいい感触を示すようになったのです。ここまで立て直してくれたことを、とても心強く思いました」「レースデイのコンディションは完璧でした。真っ青な空に覆われ、ファンの皆さんは興奮していて、去年より混んでいるように思われました。そしてパレードラップを走っているときは最高の気分を味わいました!」マシンの状態が改善されていたうえ、レース距離の最初の3/4では一度もイエローが提示されないという異例の展開となった。「スタートはまずまず上手くいきました。スムーズなスタートで、素早くリズムに乗ることができました。僕のまわりにいたドライバーは、マシンのバランスがあまりよくなく、アンダーステアに苦しんでいるように見えました。でも、僕にとっての最初のスティントは好調で、コース上でたくさんのマシンをオーバーテイクしながら23番手から12番手までポジションを上げることができました」「第2スティントと第3スティントに向けては、トラフィック内のフィーリングを改善するため、ピットストップの際、フロントのグリップを高める方向でフロントウィングやタイアの空気圧を調整しました。ところが、プラクティスで十分なデータを集められていなかったため、期待したほど正確な調整を行うことができませんでした。この影響で第2スティントと第3スティントでは激しいバランスシフトが起こり、ひどいオーバーステアとなってしまいました。そこで僕はウェイトジャッカーやアンチロールバーを最大限活用してニュートラルステアに近づけようとしましたが、マシンをコントロールするのは至難の業でした」「とはいえ、いちばん大切なことはリードラップに留まることです。けれども、イエローがずっと出なかったため、一歩間違えるとあっという間にラップダウンにされる可能性がありました。インディ500で130周もイエローが出ないとは思ってもみませんでした! ただし、第4スティント以降はバランス改善の為の調整を進めスピードを取り戻すことに成功します」チャーリー・キンボールがクラッシュして最初のイエローが提示されたとき、佐藤琢...
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