2026年F1シーズンのパワーユニット(PU)性能評価をめぐり、レッドブルとFIA(国際自動車連盟)の対立が新たな局面を迎えている。FIAが5月のマイアミGP後に実施したエンジン性能評価で、レッドブル・パワートレインズ製PUが「基準(ベンチマーク)」と認定されたことに対し、チーム側は現在も異議を唱え続けている。
この対立は単なる技術論争にとどまらず、FIA国際控訴裁判所(International Court of Appeal)への持ち込みに発展する可能性まで指摘されており、2026年シーズン後半の政治的な焦点となりつつある。ADUO制度を巡るレッドブルとFIAの溝FIAはマイアミGP後、メルセデス、フェラーリ、ホンダ、アウディ、レッドブル・パワートレインズの5メーカーの内燃エンジン(ICE)性能を比較。その結果、レッドブル製PUが最も高性能と判断された。この評価によってレッドブルはADUO(性能調整制度)の対象外となり、シーズン中のPUアップグレードを認められていない。一方で、メルセデスやフェラーリには性能改善のためのアップグレードが許可されている。しかし、この結果には多くの関係者が驚きを示した。メルセデスは開幕から10戦で8勝を挙げており、ベルギーGP後にはチーム代表トト・ヴォルフも自ら「我々のエンジンが最高だ」と認めているためだ。そのため、一部ではメルセデスやフェラーリがADUO制度を有利に活用できるよう性能を見せ方で調整しているのではないかとの憶測も浮上している。ただし、こうした主張を裏付ける証拠は示されていない。「非常に緊張した状況」 国際控訴裁判所に発展する可能性もブラジル人ジャーナリストのジュリアンネ・セラソリは、ポッドキャスト『Nailing the Apex』で、この問題を「非常に緊張した状況」と表現した。レッドブルが疑問視しているのは、FIAが示した性能評価そのものだ。しかし、FIAは他メーカーの詳細データを機密情報として扱っており、レッドブル側へ公開することはできない。セラソリは次のように説明している。「レッドブルが数値に疑問を呈しても、FIAは他メーカーのデータを見せることはできない。『我々を信頼してほしい』と言うしかないのだ」さらに、両者の対立は法廷闘争へ発展する可能性もあると指摘した。「現在、水面下では非常に緊張した状況になっている。解決策が見つからなければ裁判になる可能性もある」一方で、セラソリは「F1では最終的には政治が勝つ」とも述べ、法的な決着よりも政治的な妥協によって収束する可能性が高いとの見方も示している。ハンガリーGP後に再評価へFIAは今週末のハンガリーGP終了後、夏休み前最後となるPU性能評価を再び実施する予定となっている。ただし、レッドブルがADUOの対象となるには、最新の評価で基準PUより2%以上劣ると認定される必要がある。前回は逆にトップ評価だったため、制度適用には大幅な評価の変化が求められる。なお、現在のランキングは内燃エンジン(ICE)の性能を基準として算出されているが、ADUOによる開発許可はICEに限らず、パワーユニット全体のコンポーネントへ適用できる仕組みとなっている。今回の問題は、新代表ローラン・メキース体制となったレッドブルにとって初めての大きな政治的争点ともいえる。かつてFIAで要職を務めた経験を持つメキースが、この難しい交渉をどのように進めるのかにも注目が集まる。今後のハンガリーGP後の再評価結果次第では、レッドブルとFIAの対立がさらに激化する可能性もありそうだ。