レッドブルが、シーズン途中にピエール・ガスリーをトロロッソに降格させたことも衝撃的だったが、その後任としてダニール・クビアトではなく、アレクサンダー・アルボンを選んだことも驚きだった。2週間目のF1ドイツGPでダニール・クビアトはトロロッソに11年ぶりの表彰台をもたらしている。レース後半にスリックタイヤに交換するというギャンブルが奏功し、3位でレースを終えている。
それでも、レッドブルはパフォーマンスに改善の兆しが見えないピエール・ガスリーの代役として、ダニール・クビアトではなく、はるかに経験お浅いチームメイトのアレクサンダー・アルボンを抜擢している。二人のパフォーマンスを比較すると興味深い結果がみられる。アレクサンダー・アルボンは、プレシーズン直前にミサノでのSTR14のシェイクダウンまでF1マシンを走らせたことがなかった。したがって、シーズン序盤は予想されたミスを犯し、中国GPでは大クラッシュを喫して予選に参加することができなかった。それでも、他の11レースの内容ではアルボンの方がわずかに優位に立っている。また、ダニール・クビアトもミスがなかったわけではない。同じ中国GP、ダニール・クビアトはスタートでマクラーレンのドライバーと接触してペナルティを科せられている。レースではダニール・クビアトが6回の入賞で27ポイントを獲得し、3回の入賞で16ポイント獲得のアレクサンダー・アルボンを上回っているが、アルボンは経験を積むにつれて速さを見せ始めており、それは予選結果に特に顕著に表れている。予選結果ではアレクサンダー・アルボンの方が上回っている。ダニール・クビアトが3位表彰台を獲得したF1ドイツGPで、アレクサンダー・アルボンは素晴らしいパフォーマンスを示していた。初めてのF1でのウエットレースにも関わらず、アルボンは優れたレースクラフトを見せ、ダニール・クビアトがギャンブルに出たセーフティカー導入までは4位を走行していた。当時、クビアトは9位を走行しており、失うものが少なかった。結果と信用という点ではダニール・クビアトはレッドブル昇格に値するだろう。だが、レッドブルが求めているのは将来性であり、必ずしも合計ポイントの多いドライバーではない。ダニール・クビアトが、アレクサンダー・アルボンに経験の差が明確となるやり方で打ち負かしていたならば、レッドブルはクビアトを起用していたのは間違いないだろう。その点でクビアトはチャンスを逃したことになる。一方、アレクサンダー・アルボンも個々のレースでは非常に競争力を発揮してはいたものの、トップチームへの昇格に値するとはみなされていなかった。レッドブルは、ピエール・ガスリーがマックス・フェルスタッペンにまったく太刀打ちできていないという印象を受けており、単に代替手段を試さなければならなかった。今後の問題はアルボンがガスリーがパフォーマンスを発揮できなかった環境でどのような走りを見せるかだ。残り9戦は来季のレッドブルのドライバーラインナップを決定する上でも興味深いレースとなる。アレクサンダー・アルボンはマックス・フェルスタッペンにどこまで対抗できるか。トロロッソ・ホンダでピエール・ガスリーはダニール・クビアトに対してどのようなパフォーマンスを見せるのか。アルボンがレッドブルで結果を残せず、トロロッソでガスリーがクビアトを大きく上回るようなことになれば、レッドブルは頭痛の種を抱えることになる。