2026年F1シーズンに導入されたアクティブエアロダイナミクスは、マシンの空力哲学だけでなく、タイヤ設計にも大きな影響を及ぼしている。バーレーンでのプレシーズンテストでは、ストレートエンドでウイングがストレートモードからコーナーモードへ切り替わる瞬間、フロントおよびリアアクスルに急激な荷重スパイクが発生している様子が確認された。ピレリは、この“動的かつピーキーな荷重変化”に対応する構造を事前に設計する必要があった。
ストレートモードがもたらした新たなタイヤ荷重2026年F1では、ストレート走行時にフロントウイングとリアウイングをフラット化する「ストレートモード」が導入された。これによりドラッグとダウンフォースが減少し、最高速が向上する。一方でコーナー進入時にはウイングが立ち上がり「コーナーモード」に復帰、瞬時にダウンフォースが回復する。この切り替えにより、タイヤへかかる荷重はもはや直線的ではなく、急激なピークを伴う動的負荷へと変化した。2026年型タイヤは18インチ径を維持しつつ、フロントで25mm、リアで30mm幅が縮小され、軽量化されている。だが内部構造は、新パワーユニットの電動出力増加による高トルクや、アクティブエアロによる縦方向荷重変動を織り込んだ設計となっている。2025年12月15日にホモロゲーションされたこれらのタイヤは、実車完成前のシミュレーションおよびミュールカーでの試験に基づいて開発された。実走行データが揃い始めた現在、その設計思想が初めて検証段階に入っている。マリオ・イゾラが語る荷重ピークの実態マリオ・イゾラはバーレーンで次のように述べた。「現時点では我々はかなり想定通りだ。ただし、チームはまだ限界までプッシュしていないと思う。次のセッションではさらに荷重が増えると予想している」「昨年はストレート終端が最大荷重ポイントだった。我々はそこで荷重やキャンバー、最大ストレスを多く監視していた」「今はストレートでタイヤを強く地面に押し付けるわけではない。速度は高いが、荷重は少ない」しかし問題は、ストレートモードを閉じた瞬間の急激な荷重増加だ。「ストレートモードを閉じると、マシンの荷重ははるかに高くなる。その瞬間にピークがあり、その追加荷重がコーナーにかかる」この“縦方向ショック”は、ドライバーがブレーキを踏む瞬間やスロットルオフのタイミングと重なれば、ロックアップやピッチング挙動に影響を及ぼす可能性もある。アクティブエアロ故障時のリスクさらなる未知数は、アクティブエアロのシステムトラブルである。仮にマシンがコーナーモードのまま固定された場合、常時最大ダウンフォース状態でストレートを走行することになる。サウジアラビア、バクー、ラスベガスのようなロングストレートでは、想定以上の時間と速度でタイヤに高荷重が加わる。イゾラはこう説明する。「システムが閉じたまま、あるいは部分的に開いたままという状況も考慮しなければならない」「我々はシステムが正常に作動する場合と、作動しない場合の両方を前提に設計している」「もしシステムが機能しない場合、追加荷重を考慮しなければならない」現行規定では、スリックタイヤ使用時でもストレートモードの使用は義務ではない。しかし実際には使用しなければ床を路面に接触させるリスクがあるため、常時閉鎖走行は現実的ではない。ブラック&オレンジフラッグ(メカニカルトラブル警告)の対象になるかとの問いには、イゾラは慎重な姿勢を示した。「その議論はこれまでしていない。正直なところ分からない」「システムは99%の時間は正常に機能すると考えている。ただ、もし開幕数戦で問題が多発すれば、議論が必要になるだろう」2026年F1は“空力だけでなくタイヤも未知数”アクティブエアロはラップタイム向上の鍵である一方、タイヤにはこれまでにない急激な荷重変動をもたらす。チームがシーズンを通じてダウンフォースを増加させていけば、ピーク荷重はさらに高まる可能性がある。ピレリはパフォーマンスとデグラデーションのバランスを維持しつつ、戦略の多様性を保つための“適正な処方”を模索している段階だ。2026年F1は、空力レギュレーションの転換だけでなく、タイヤの耐荷重設計という側面でも新たな実験場となっている。バーレーンで見えた激しい荷重スパイクは、その序章に過ぎない。
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