ピレリが、2014年 第9戦 F1イギリスGPが開催されるシルバーストン・サーキットをタイヤメーカーの観点から解説した。F1は、イギリスのモータースポーツのホーム、シルバーストンへと向かう。全チーム中最大の8チームがイギリスを拠点としており、シルバーストンから1時間弱のディドコットに“centre of excellence(センター・オブ・エクセレンス)”と呼ばれる流通拠点を置くピレリにとっても、ここが第2のホームレースとなる。
シルバーストンは、シーズン中でも屈指の高速サーキットとして知られており、タイヤに高い負荷が課せられる。レース週末中に降水確率が高いことや、気温や風速の差が激しいことなどの変わりやすい天候が、さらにこのサーキットでのレースを難しくしている。このため、フリー走行で得られたデータを実際のレースコンディションで活用することが困難になることも稀ではない。ピレリは、シルバーストンの難しさに対応するため、タイヤレンジ中で最も硬い組み合わせであるP Zeroオレンジ・ハードとP Zeroホワイト・ミディアムを選択した。各チームは、高速コーナーが連続するラップの前半を通してベストなコーナリングスピードを得るために、ミディアムもしくはハイダウンフォースのセットアップで走行する傾向にある。ラップ全体を通してブレーキングエリアが短いため、このセッティングがストレートでの大きなハンディキャップとなることはない。このため、オーバーテイクは非常に難しくなっている。シルバーストンは、高速で流れるようなレイアウトのため、常にタイヤに多様な高い負荷を課す。時には、異なる負荷が同時にかかることもある。横方向の荷重はピーク時5Gに達し、タイヤの表面温度は110℃を超える可能性がある。ミディアムタイヤは作動温度領域が低く、低温下でも最適な性能を発揮できるコンパウンド。ハードタイヤは、作動温度領域が高く、高温のコンディションや厳しい路面状態に適したコンパウンド。シルバーストンは、シーズン中でも気温の変動が激しいサーキットのひとつで、セッションとセッションの間に路面温度が15℃以上変動することもあり、戦略予測を難しくしている。シルバーストンのトラックは、シーズンを通して、特にグランプリ週末のサポートレースなどで集中的に使用されるため、他のサーキットのように路面の改善はそれほど大きな要素にならない。ポール・ヘンベリー (ピレリ・モータースポーツ・ダイレクター)「シルバーストンは、長い歴史を誇る、シーズン中で最も素晴らしいサーキットのひとつであり、その高速性ゆえに常にドライバーやファンをスリリングにさせてくれます。イギリスのファンは、世界で最もモータースポーツへの造詣が深く、熱狂的な人々です。天候がどうあれ、チーム一同で彼らに会えることは本当に素晴らしいことです。もちろん、天候はシルバーストンでいつも話題となります。これまで、輝く太陽から豪雨まであらゆる天候状態を経験してきました。したがって、過去のデータに依存できないことも多いため、リアルタイムなコンディションに基づいて迅速な戦略の決定を行う能力が常に非常に重要となります。我々が持ち込んだ最も硬い組み合わせのタイヤは、シルバーストンのコンディションに適応すると思います。また、グランプリ後、火曜日と水曜日に行われる今シーズン最後のインシーズン・タイヤテストを楽しみにしています。我々の開発テストの一環として、テスト1日目にフェラーリとマルシャが、2日目にレッドブルとロータスがタイヤテストを行う予定です」ジャン・アレジ (ピレリ・コンサルタント)「シルバーストンはFormula Oneの歴史の一部ですが、昔のシルバーストンは現在とは全く異なるものでした。当時、ストウコーナーのような高速コーナーを含む6つのコーナーしか存在しない時期があったのです。今では大きく様相が変わりました。私は、GTカーでしか現在のレイアウトのサーキットを走行したことがありません。しかし、今でも限界点で究極のドライビングが求められるポイントが数か所あります。例を挙げると、過去同様、ベケッツを含む連続コーナーはスロットル全開の高速コーナーです。非常に厳しいレースを通して良好なペースを維持し、良好なラップタイムの鍵となる重要なコンマ1秒を削るためには、完璧にバランスのとれたマシンとタイヤが必要になります。サーキットは流れるようなコースレイアウトのため、肉体的よりも精神的な疲労が大きくなります」


全文を読む